西松建設によるダミー政治団体を使った違法献金を受け取ったとして、小沢一郎民主党代表の公設第一秘書が東京地検特捜部に逮捕された。政治資金規正法違反の容疑だが、政治資金収支報告書に記載された金、つまり表の金が逮捕容疑になることは極めて稀である。もらった金を収支報告書に記載していなかったというこれまでのケースとは違うもので、永田町関係者も首をかしげている。
いずれにしろ、小沢代表の金庫番逮捕が永田町に与えた衝撃は大きい。しかし、一番ショックを受けたのは、次の首相には小沢代表こそが相応しいと考えていた有権者である。政権交代を射程距離に捉えていた民主党そのものへの期待感が薄らぐ可能性もある。
今、民主党に求められているのは、小沢代表を庇うことではあるまい。積極的に事件を調査し、事の真相を自ら明らかにする姿勢である。これまで野党側は、自民党が金銭がらみの事件を起こすたびに証人喚問などを要求し、国会の場で糾明する努力を続けてきた。自党の党首のことだからといって、「会見での話を信じる」では有権者は納得しない。小沢代表を含めて、西松建設側の金を受け取っていたことが明らかとなった政治家全ての証人喚問くらい要求すべきであろう。
新しい政治を希求する有権者に対して「民主党は違う」と思わせるためには、小沢代表の辞任もしくは更迭も選択肢に入るだろう。ともかく民主党は、事実関係を徹底究明する努力を始めるべきである。そうでなければ「自民党と変わらない」という失望感が広がる一方だ。民主党が自民党との違いを有権者に示せるかどうか、大きな岐路に立たされている。
【頭山 隆】
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