西松建設による違法献金事件が広がりを見せはじめた。小沢民主党代表の秘書が逮捕され永田町が騒然とするなか、現職閣僚である二階経済産業大臣にも捜査が及ぶ事態となっている。自民党がいいか民主党がいいかの問題ではなく、日本の政治構造そのものが問われているのではないだろうか。それにしても、マスコミ報道のあり方も含め、この国の「事件」に対する考え方には大きな問題がある。誤解を恐れずに申し上げるのであるが・・・。
マスコミはこぞって小沢氏の代表辞任を煽り立てているが、これはおかしいと言いたい。
日本の司法制度では、逮捕、起訴、裁判と順序が決まっている。裁判は三審制である。その裁判で判決が出て「確定」するまでは「推定無罪」だろう。逮捕・起訴されたから「辞めろ」というのは、日本の法制度を無視した論法ではないだろうか。ちなみに今日の時点で小沢氏の秘書は起訴もされていない。
事件を追う記者や評論家のなかには、「東京地検特捜部が手がけた事件でハズレはない」などと平気で言う人もいる。日本では逮捕・起訴されたケースの9割以上が有罪判決を受けるのだというが、冤罪事件が後を絶たないのも事実。「逮捕されたから黒」と決め付ける風潮がどれほどの悲劇を生んできたか忘れてはなるまい。ましてや、裁判員制度が始まろうかというこの時期になっても、この国の事件の捉え方は何も変わってはいない。
自民党であれ民主党であれ、犯罪をおかしたのなら司法の裁きを受ければいい。道義的な問題があるのなら、出所進退は政治家自らが決めればいい。しかし、嫌疑をかけられた側が「無罪」を主張するのであれば、裁判の結果が出るまでは冷静に結果を待つべきではないか。検察がリークしたと思われる報道が事件を大きくし、「小沢は黒」と思い込ませるような有り様は、褒められたものではない。
西松建設のダミー政治団体から資金提供を受けた政治家の数は、圧倒的に自民党のほうが多い。しかし、小沢氏の秘書が逮捕されたことで、民主党の支持率が下がり、麻生内閣の支持率が上昇している。すでに有権者も冷静さを失っているのではないか。小沢氏の言葉が信用できないと判断するのは個人の自由である。しかし、それをもって「世論はこうだから辞めろ」というのは間違いである。民主党議員も選挙目当てで右往左往するのではなく、司法制度の原理・原則に基づき行動したらどうか。支持率が全ての政治姿勢は「大衆迎合」に陥る危険性も否めない。立法府の人間に冷静な対応ができないのなら裁判員制度など成功するはずもないが・・・。
【頭山 隆】
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