西松建設のダミー政治団体「新政治問題研究会」から300万円の寄附を受けた自民党の支部が存在する。「自由民主党東京都未来の都市環境を考える支部」(以下、『都市環境を考える支部』)である。
東京都選管への届け出書類によると、同支部は05年12月設立、東京都に居住する建設業関係者の党員をもって構成するとしており、事務所は東京都内に置かれる。設立目的は「自民党東京都連並びに党本部との関係を密接に保ちながら、業界の発展と党の使命綱領および政策を実現するための諸活動を行なう」と記されている。「業界」とは建設業界のことになる。
同支部が西松建設のダミー団体「新政治問題研究会」から寄附を受けたのは06年2月1日。300万円を一括して受け入れた形となっている。この年、同支部以外で「新政治問題研究会」から「寄附」を受けたのは次の団体である。
・東京都参議院比例区第11支部(代表 藤野公孝)・・・100万円
・藤井孝男後援会(代表 藤井孝男)・・・100万円
・自由民主党千葉県第10選挙区支部(代表 林幹雄)・・・100万円
・陸山会(代表 小沢一郎)・・・100万円
・民主党岩手県第4選挙区支部(代表 小沢一郎)・・・100万円
・民主党岩手県総支部連合会(代表 達増拓也)・・・100万円
1団体が受けた寄附でもっとも大きい300万円という金額は「都市環境を考える支部」だけということになる。つまり西松建設にとって「環境を考える支部」は、名前を隠してまとまった寄附をする必要がある団体だったということになる。建設業界の職域支部として設立された同支部に対してさえ、西松建設は名前を出さなかったのである。
収支報告書によると06年、「環境を考える支部」は4,585万7,838円の収入を得ている。その大半の4,500万円は寄附によるもので、内訳は個人から700万円、法人から2,300万円、政治団体から1,500万円となっている(実はこの内訳には間違いがあるのだが、その点は稿を改めて詳述したい)。「新政治問題研究会」からのいわゆる西松マネー300万円は、政治団体分1,500万円の中に入ることになる。
次に、同支部が06年に「寄附」をした相手先を確認すると、自民党の八つの選挙区支部と九つの政治団体が記載されている。このうち五つの政党支部と四つの政治団体の計9団体に対し、06年2月10日一律50万円が寄附される。450万円が費消された勘定だ。
前年からの繰入金がゼロであることから、2月10日時点で「環境を考える支部」が保有する政治資金は、同年1月1日から2月10日までに入金された金だけとなる。このうち300万円が2月1日に入金された西松マネーであることは前述したとおりだ。(西松からの金以外としては、3法人からそれぞれ300万円、個人3人から100万円ずつを集めている)外形上、この西松からの300万円は、自民党議員の資金管理団体や政党支部に薄く広く流れたことになる。つまり、西松マネーは自民党議員の政治団体や政党支部に迂回献金されたということになるが、見方を変えれば、西松の300万円は特定政治家に向けた金だった可能性も否定できない。西松側が「環境を考える支部」に献金先を指定していた場合である。いずれにしろ、「環境を考える支部」をめぐる金の動きは、西松マネーが、報じられている政治家以外にも広く流れているという証左である。
小沢民主党代表にばかり注目が集まるが、政界を蝕むゼネコンマネー全ての検証が必要なのである。
【頭山 隆】
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