こども病院人工島移転は、多くの市民の反対意見を置き去りにその作業が進んでいる。人工島の土地は予定通り購入され、あとは総務省による起債の許可、そしてPFI事業者の公募となる。事業者が決まれば建設に着手する。そう、「事業者が決まれば」である・・・。
病院PFIには、いくつかの形態があり、取り扱う業務によって商社が主体となるものやゼネコンが主体となるものなどが挙げられる。こども病院の場合は、ゼネコンかもしくはコンサルタント会社が主体になると考えられる。いずれにしてもゼネコンが巨額な建設費で潤うことは間違いない。公共事業、とりわけ箱モノが少なくなった現状を考えると、PFI事業者として多少のリスクをおかしても工事は欲しいところだろう。
ところが、昨年7月にデータマックス取材班がスクープした「こども病院現地建て替え」の工事費85億5,000万円を1.5倍・128億3,000万円に水増しした問題が、今年になって再燃。難しい事態となっている。
福岡市職員だけで構成された人工島事業の検証・検討チームは、梓設計(東京)に見積もらせた工事費を1.5倍にして、現地建て替えには費用がかかると結論付けた。工事費を水増しした根拠は、大手ゼネコンに「口頭で聞いた」というものだった。しかし、ゼネコンから聞いたとする「1.5倍」の証拠書類等がないことが問題となり、吉田宏市長らが公文書毀棄容疑で告発される騒ぎとなっている。
市役所側は、「1.5倍」との回答を出したとされる大手ゼネコン3社について、頑強に会社名を明かさない。会社名を公表しないことを条件に再見積りを頼んだからだという。これでは本当に大手ゼネコンに再見積りを頼んだのかどうか分からない。「検証・検討報告書」という公式文書に水増し額を記載しておきながら、その根拠が示せなくなっているのである。検証・検討のための時間が足りなかったというが、文書による依頼も、回答文書も残さずに、行政が政策立案を行なうことは考えられない。説明責任が果たせないからだ。市OBはもちろん、現職からも「信じられない」との声が聞かれるのは、こうしたいい加減な仕事が平然と行なわれたからである。
こども病院には、多くの子どもの命が託されている。人工島に移転するとなれば都市高速延伸まで入れて600億円ともいわれる公費が投入される。当然、計画の内容や事業の進め方については透明性が求められる。市役所はそれが分かっていながらなお、積算根拠とゼネコン名を示そうとしない。なぜだろう。
大手ゼネコンの名前を明かした場合、大きな問題に発展、こども病院の人工島移転が頓挫する可能性も出てくるからに他ならない。
(つづく)