政治資金規正法違反はどうなってしまったのだろう。西松建設によるダミー政治団体を使った違法献金事件のはじまりは、収支報告書への虚偽記載という政治資金規正法違反だったはずだ。ところが、毎日のように新聞・テレビで報じられるのは、東北を舞台にした「談合組織」の存在と、西松以外の大手ゼネコンの関与である。「小沢氏サイドからの横やりを恐れて献金要請に応えた」などという記事まで出はじめた。
東京地検特捜部による小沢代表の公設第一秘書への逮捕容疑は「政治資金規正法違反(虚偽記載)」だった。小沢代表の資金管理団体「陸山会」への「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」による寄附が、西松建設からの企業献金であることを知りながら、政治団体からのものであると嘘の記載をしたという疑いである。当然のことながら、西松のダミー2団体から同様の「寄附」やパーティ券購入代金の形で政治資金提供を受けた政治家も調べられるべきである。事実、秘書逮捕の直後、自民党側の二階経済産業大臣、森元首相、尾身元財務相らの名前が取りざたされ、すぐにも自民党側への捜査開始といった論調ばかりだった。しかし、自民党側は野放しのまま、事件は確実に「別件」へと移行している。とても公平な捜査とは言えまい。
新聞記事の見出しには必ずといっていいほど「小沢氏」が出ているが、内容といえば東北の公共事業をめぐる談合組織の存在についてである。情報源についても、相変わらずあいまいなものばかりである。共通しているのは「小沢」という固有名詞が付くことだけだ。なんとしても「小沢はクロ」と言いたいらしい。検察リークが目に余ることも一目瞭然、テレビのコメンテーター諸氏からも同様の指摘が出はじめている。
小沢代表側が談合を仕切り、違法な金を受け取っていたのなら、それはそれとして断罪されるべきであろう。しかし、繰り返すが「西松建設事件」の唯一の逮捕者への容疑は「政治資金規正法違反」なのだ。検察が談合事件を立件するのは当然だが、国策捜査との批判を覚悟で野党第一党の党首の秘書を逮捕までして問題提起した形となった「政治資金をめぐる疑惑」について、きちんと捜査を尽くすべきである。そうでなければ政治資金規正法は益々ザル法化してしまう。
【頭山】
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