小沢一郎vs検察の決戦が大きなヤマ場を迎えている。
東京地検特捜部は、逮捕した小沢氏の秘書・大久保隆規容疑者を勾留期限が切れる3月24日に政治資金規正法違反容疑で起訴する方針を固めており、その前に小沢氏本人を任意で事情聴取するかどうかが注目されていた。
どうやら本人聴取は見送りとの見方が強いが、それで小沢氏への捜査が”打ち切り”になるわけではない。むしろ逆だ。
政治資金規正法では会計責任者(大久保秘書)が法律違反を犯した場合、代表者(小沢氏)の選任監督責任も問われるケースがある。03年に起きた土屋義彦・埼玉県知事のヤミ献金事件では、長女が同法違反で起訴され、土屋氏も監督責任を問われたが、辞職したことで起訴猶予となった。
「特捜部は小沢が民主党代表を辞任するなら、本人を聴取したうえで起訴猶予にする選択肢を考えている。土屋パターンだ。ところが、本人には辞任する気が見えないし、大久保容疑者も容疑を完全否認して徹底抗戦の構えだ。監督責任での立件は難しく、幕引きセレモニーとしての小沢聴取をする意味がない」(検察筋)
小沢氏は会見で3月24日の検察の対応(秘書が起訴されるかどうか)を見て進退を含めて判断すると語っているが、特捜部は「辞任しない」と判断しているわけで、それは小沢氏が代表辞任と引きかえに起訴を逃れるという”司法取引”を拒否したことを意味する。そうなると、特捜部は面子にかけても政治資金規正法以上の罪状で捜査を展開させなければならない。
もっとも、小沢氏の側にも選択の余地はなかった。
かつての金丸信・元自民党副総裁の5億円ヤミ献金事件の際、金丸氏は副総裁を辞任、さらに議員辞職して容疑を認めることで事態収拾をはかり、特捜部は略式起訴して「罰金20万円」となった。ところが、「5億円もらって20万の罰金ですませるのか」と検察が猛批判を浴び、特捜部は容疑を脱税に切り替えて金丸氏を逮捕した。当時、金丸氏の側近だった小沢氏は裁判で徹底的に争うことを主張していた。
小沢氏にすれば、自分が当事者の立場になった今回、下手に検察に妥協すれば政治生命がなくなるだけに捜査に対し一歩も引かない構えだ。
「小沢聴取見送り」は、小沢氏と検察との戦いが、大久保秘書の起訴後により熾烈な”第2ラウンド”に向かうことを物語る。
【千早】
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