西松建設による違法献金事件をめぐり、情報源が明確ではない記事やニュースが氾濫したことで、検察側によるリークが問題視されている。英語のleak(リーク)は「漏れる」を意味する。とすれば、捜査情報のleakは「情報漏えい」ということになるが、そのことに違法性はないのだろうか。
問題になる「リーク記事」とは
小沢民主党代表の秘書逮捕以来、毎日のように検察側のリークとしか思えないニュースが流され、事件が形づくられてきた。取材に応じたゼネコン側が聴取内容を話すというケースもあるだろうが、記者が検察側から聞いたと推測されるものも少なくない。明らかに検察側しか持ち合わせていないと思われる情報に基づく報道がそれだ。ある時は捜査の方向を示す記事であり、またある時はさらに大きな疑惑を印象付けるようなニュースであったりする。例えば「自民党・二階氏側事情聴取へ」であるとか、東北地方の公共事業に絡む談合に関するものである。こうした報道内容は、新たな事実であるがゆえに、報じられるたびに事件の本質を変えるほどの力を有している。意図的にリークして、西松建設事件の方向性を変えようとしているといっても過言ではあるまい。多分に検察側の都合なのだろうが、こうした場合、記事の情報源についてはあいまいな記述となる。情報源が捜査関係者なのかゼネコン関係者なのか判然としない「関係者によると」といった表現や、情報源を隠して単に「~であることが分かった」と記したものだ。
問題なのは、検察側が公式発表もしていないのに「~と供述している」「調べに対し認めている」「捜査当局は~と見ている」といった表現や、前述のように検察の狙いを印象付けるようなニュースである。明らかに捜査関係者からの情報、つまり「リーク」と見られ、これは捜査情報が「漏えい」しているという可能性を示唆している。ならば、裁判員制度の導入を目前に控え、その違法性について検証されるべき問題であろう。本稿で検証の対象とする「リーク」とは、今回の西松建設事件に見られる「度を過ぎたリーク」についてである。
守秘義務違反について
問われるべき第一の点は、捜査情報のリークが守秘義務違反か否かということである。
いうまでもなく検察官は国家公務員であり、「国家公務員法」の適用を受ける。同法100条には「職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする」として『秘密を守る義務』を規定している。いわゆる「守秘義務」である。違反すれば「守秘義務違反」として1年以下の懲役又は3万円以下の罰金である。
検察官が守秘義務違反を犯した場合、罰せられるだけでなく、場合によっては多大な社会的影響を及ぼす。検察への信頼が失われることは言うまでもない。だからこそ捜査情報の漏えいはあってはならないことである。しかし、その「あってはならない」はずの検察官による情報漏えいが表面化した事件が存在する。(つづく)
【頭山 隆】