続投宣言した小沢代表に、民主党内から公然と辞任を求める声が噴き出した。まさに政府・与党と検察の思う壺である。
いうまでもなく自民党にとって最大の脅威は小沢一郎氏だった。かつて自民党の幹事長を務め同党の選挙手法を知りぬいた小沢氏は、民主党代表に就任してから次々と保守の牙城を突き崩してきた。端的に示しているのが自民党の金城湯池といわれてきた「農村部」の自民離れである。政権公約として戸別所得補償制度を打ち出し、農家に民主党への期待感を抱かせることに成功、参院選勝利(07年)の一因となった。小沢氏を熱烈に支持する人の中には、古くは自民党のコアな支持層だったと思われる人たちが多い。そうした意味でも小沢氏は自民党の天敵なのだ。
「代表辞任」の声をあげはじめた民主党の議員たちは、一様に「国民の声」あるいは「選挙」を優先する発言をしている。国民の声が大切なのは当然だが、迎合してはいけない。
小沢氏側に対する政治資金規正法違反容疑については、裁判で黒白をつけるのが筋である。それが日本の司法制度でもある。小沢氏の秘書が起訴され、容疑事実を否認しているのであれば、裁判が始まる前に世論が「判決」を下すことなどあってはならない。小沢氏に納得できる説明を求めると言っても、小沢氏が拘置所の中にいる秘書から直接事情を聞くことはできない。国会議員なら「接見禁止」くらい理解しているだろう。さらに言うなら、裁判という「闘争」の場に舞台が移った以上、こちらの手の内を検察側に晒すことなどできるはずがない。それを承知で「説明しろ」「辞任しろ」というのであれば、それはただの人気取り。大衆迎合の議員でしかない。対峙する自民党の政治家は数十人の規模で西松マネーをもらっている。なぜそのことについて問題提起しないのか。なぜ国策捜査であるとか検察リークの違法性について発言しないのか。起訴した途端「小沢氏の秘書が容疑事実を認めた」との報道が流れている。検察側が意図的に流さなければそんなことは分からない。裁判前に世論に「予断」を与えることが許されるというのだろうか。何よりも情けないのは、反発を恐れてか、自国の司法制度の在り方に疑問を投げかけない民主党の議員たちである。
もちろん世論は小沢氏や民主党に厳しい視線を向けるだろう。しかし、それに迎合する民主党議員の姿には辟易する。検察や自民党は、なんとしても小沢氏を代表辞任に追い込みたい。それさえ分からないのなら、権力闘争を勝ち抜く力などあるはずがない。これでは「国策捜査」の思う壺である。
【頭山】
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