「増設は暫定案だ、新空港こそ抜本的対策だ」と公言していた麻生知事を現空港の増設へと踏み切らせた背景には、衆議院の解散・総選挙の先送りによる政局の混迷と世界的な不況がある。さらには大きな要素として2年後に控えた知事選に対する思惑が交錯、知事をして現実的な選択を迫ったと言えよう。
麻生知事が描いていた当初のシナリオは次のようなものだったと言われている。
PIによるステップが終了するのは08年末。少なくとも年内(08年)には総選挙が行なわれ、自民党が政権を維持すれば新設に向けた方向が出てくる。民主党が政権を取れば新空港は絶望的だが、その選挙の結果で判断すれば良いというもの。
しかし期待された総選挙は引き延ばされ、麻生内閣の支持率も低下。「年度内に決断する」とした時期が迫る中で、麻生知事は追い込まれていた。こうした解散・総選挙をめぐる政局の混迷のほか、知事を支持する自民党県議団の意見がまとまらず、「新設」と「増設」に二分されていたことも見逃せない。
昨年6月30日に出された滑走路をかさ上げする「増設改良案」(今回の決断された内容)。それは、国交省からの「新設案ノー」のサインでもあった。自民党の有力県議は7月、本誌記者の質問にこう答えていた。「これ(増設)でいくしかないだろう。新設は理想論だが現実には無理だ」そしてこうも付け加えた。「麻生知事が新設でいくとしたら県議団はまとまらないし、5選は駄目だということになろう」。
麻生知事の頼みの綱であった県議団、県選出の国会議員の意見もまとまらず、新設では県民の支持は得られないという状況に加え、5選という難関に包囲されていたと言えよう。その意味では今回の知事の決断は、自らの理想と哲学にこだわり、最終的に「新空港の調査研究」を盛り込むという(反発を買っているとはいえ)「「現実的な」ものだったと言えよう。
自民党県議団は今回の知事の決断を支持しており、5選に向けたひとつの関門をくぐりぬけたともいえる。しかしこれで5選が確実になったということではない。別の難問が残されていることも確かだ。