昨年10月、博多港で水深15mのコンテナバースが供用を開始した。大型コンテナ船の寄港が始まり、既に整備されている世界水準の物流システムと併せて、博多港の高いポテンシャルが示された。一方で世界的には知名度が低く、釜山や上海など大型港との競合関係もある。こうした環境の中、博多港はこれからどのような役割を担っていくのか。その進むべき方向性をKBCラジオ番組パーソナリティなどとして活躍中の中村もとき氏の司会で、博多港ふ頭(株)代表取締役社長の江頭和彦氏、九州大学大学院経済学研究院教授の久野国夫氏、福岡ロジテム(株)顧問の賀来紀久男氏の3名に語り合っていただいた。
●中央から東に向けて開発
中村
近代港湾としての博多港を考える場合に、いつも問題になるのは水深でした。そうした中で昨年10月に水深15メートルのコンテナバースが一部共用を始めました。今日はこの大水深岸壁の意義を中心に、博多港の現状とこれからについて話し合ってみたいと思います。まず、久野さん、博多港の全国的な位置付けについてお話しください。
久野
九州の中で福岡県は最も重要な産業機能が集積しており、海外との貿易でも博多港と福岡空港、北九州空港の3か所で九州全体の7割近くを占めるほどです。ですから博多港は産業面での九州の玄関口ということはいえるでしょう。
中村
現在の博多港の開発の状況は?
江頭
開発としては、アイランドシティで一段落します。これまで、須崎・中央ふ頭から東浜、箱崎ふ頭、香椎パークポート、そしてアイランドシティと、博多湾の中央部から東に向って開発が進んできました。物流施設は西公園下の荒津地区までで、ここから西側はウォーターフロント開発という形で住宅や業務エリア、公園などを開発しており、それがシーサイドももち、西福岡マリナタウンまで続きます。開発の軸が、東は港湾の物流・人流の開発、西は環境開発・都市開発というふうに分かれています。
中村
完全に色分けされているんですね。
江頭
そうです。さらには、アイランドシティの計画では、同時期に開発事業が進んでいたシーサイドももちや西福岡マリナタウンと同様に、物流が軸でありながら自然環境との調和という視点も生かそうということで、これまでのような埋立て方式ではなく、埋め立て地域を思い切って沖出し、つまり人工島方式にしました。こうすることによって和白の海岸とアイランドシティとの間に新しい水辺空間が誕生したのです。ここは大濠公園の5~6個分くらいの面積があります。幅は200mくらいで、これはお互いの対岸を見渡すことができるヒューマンスケールの距離感になっています。この計画を立てたのが20年ほど前です。
つづく
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