不良債権化させたのも佐賀銀行
03年10月以来、同社の不動産開発資金を融資してきた佐賀銀行が急遽、同社に対する方針を転換。昨年夏、第3者への売却方針を固めた。同行はアーサー社の資産評価を行ない、入札をかけて10数社が応募したという。最後まで残ったのは2社だったが、応募会社にとって同社の魅力は、安定収入が保証されている分譲マンション管理事業だったとされる。
同行が売却方針を固めた段階で、アーサー社は多くの分譲マンションを販売中だった。08年3月中間期でも60億4,200万円(不動産事業投下資金)が計上されているほどである。佐賀銀行の方針変更に、同社の経営陣もMBO(経営陣がスポンサーを見つけて買収)という考えも及ばず、08年9月29日、銀行のなすがままにあなぶき興産九州に売却された。生きている会社を潰すのと同然に処理したのである。
譲渡資産と負債(アーサーヒューマネット⇒穴吹興産) | (単位:百万円) |
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譲渡前の資産と負債(アーサーヒューマネット) | |||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
2008年3月中間期の財務内容 | (単位:百万円) |
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佐賀銀行はアーサー社の売却に当って、資産評価をコンサルタントに依頼している。その評価額が上記表の43億2,600万円であったのであろう。しかし、08年3月中間期のアーサー社の総資産は88億1,200万円、販売用不動産だけでも60億4,200万円あった。同社は再編された会社で、資産のほとんどを営業資産に投下してきた。そのため、極端な評価損が発生する要素は少ない。また、同社の開発物件は福岡市の中心部から離れた郊外にあり、不動産価格下落の影響も僅少である。建築代金は正当に評価されよう。ただ、同社の資産を不良債権処理との認識に立って評価する場合、買う方の立場になって資産評価することから、評価額が通常の評価と自ずと異なる。たとえば、破綻企業の非常貸借対照表に見る評価額のように極端に低くなる。そのため佐賀銀行は、自主再建させていたアーサー社を不良資産会社にしてしまったと見られる。
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