昨年10月、博多港で水深15mのコンテナバースが供用を開始した。大型コンテナ船の寄港が始まり、既に整備されている世界水準の物流システムと併せて、博多港の高いポテンシャルが示された。一方で世界的には知名度が低く、釜山や上海など大型港との競合関係もある。こうした環境の中、博多港はこれからどのような役割を担っていくのか。その進むべき方向性をKBCラジオ番組パーソナリティなどとして活躍中の中村もとき氏の司会で、博多港ふ頭(株)代表取締役社長の江頭和彦氏、九州大学大学院経済学研究院教授の久野国夫氏、福岡ロジテム(株)顧問の賀来紀久男氏の3名に語り合っていただいた。
●欧州航路の大型船も寄港
中村
昨年10月末に水深15mのコンテナバースが部分供用開始となりました。賀来さんはアジアのいろんな港もご覧になっているわけですが、その中で水深15mというのはどのような意義があるのでしょう?
賀来
世界のコンテナ輸送では、船の超大型化が進んでおり、パナマ運河を通行することができない「ポストパナマックス」と呼ばれる1万TEU、1万2,000TEUクラスのコンテナ船が基幹路線に投入されています。この船が寄港するには18~20mの水深が必要で、今回の博多港の15mバースでは残念ながら対応できませんが、現在の世界航路の主力である8,000TEUクラスの大型のパナマックス船が接岸できるようになりました。船を寄港させるためには水深が絶対条件ですから、我々とすれば非常にありがたいことです。
江頭
アイランドシティに、既に欧州航路の8,000TEU積みの大型コンテナ船が入港するようになりました。基幹航路の船に直接載せたり降ろしたりできるということは、利用者にとって大きなメリットで、余分なお金がかかりません。小さい船で釜山や神戸に一旦運んでから基幹航路に乗せ替えるといった手間と時間とコストがいらなくなるのです。
●釜山や上海とは協調を
中村
釜山や上海などハブ港といわれるアジアの巨大港は、スケールの大きさでは博多港の比ではありません。それなのに、博多港は「玄関港」とか「アジアに向けて」といったハブ的な役割が求められているという面もあります。博多港は釜山や上海と対抗しなければならないのでしょうか?
江頭
博多港は九州・西日本の拠点の港であって、顧客は国内中心です。一方で韓国の釜山は中国などの荷物を中継するためにできた港であるという性格の違いがあります。船は世界をまわっています。例えば韓国・現代の欧州航路は、シンガポールから北上して中国を経由して釜山まできます。そのときに、博多港に15m岸壁ができたことで、博多港まで回ってくれるのです。せっかく釜山まで来たのだから、その近くの博多で商売ができるのであれば、つまり荷物があるのであれば博多港にも寄りましょう、と。釜山と博多は近いことがメリットでもあるわけで、協調して欧州航路の価値を高めることになるのです。また、一方で上海などのアジアと結ぶ航路については、大型船は必要ありません。それよりも高速で定時性の高い航路の便数を増やしていくことがお客さまにとって利用しやすい条件となります。そうした航路の開発が必要なのであって、釜山や上海は競争相手ではないのです。
中村
なるほど、博多港は九州・西日本の玄関港、なんですね。
賀来
ハブ港、という概念で考えると、国内ではどうしても無理があります。それは国内のフィーダー料金が高いために、例えば世界向けの国内貨物を博多港に集める、ということが現実問題として不可能なんですよ。国際フィーダー料金は国内のおおむね半値です。ですから、国内の貨物をいったん博多に集めて博多から世界に出すよりも、直接釜山に出して釜山から世界に送る方が国際料金で済むので、商社や物流会社はそちらを選択します。しかし、みなさんに勘違いしていただきたくないのは、博多港と釜山や上海などとの違いは規模であって、荷物を扱う港湾機能については同じか、あるいは博多港の方が優れている面もあるということです。この点は今後の港湾運営で生かしていかなければならないと思います。
つづく
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