8年ぶりの社員総会で発言
福岡の建設業界の重鎮・大高建設(株)の大木孝朋代表取締役会長兼社長が4月1日の社員総会で8年ぶりに所信表明を行なった。あとで触れるが8年ぶりの発言になったのは、社内から石川政道、田中道佳両氏を社長に抜擢し全権を委任していたので挙動を控えていたのだ。34期目になる2009年3月期を終えた大高建設は依然として無借金を誇っている財務健全な企業である。ここに至るまでの大木氏の卓越した指導力には誰でもが兜を脱いでいる。社員総会における発言のタイトルは『人と会社』である。8年ぶりの会長の講話に社員全員が緊張した顔つきで聞きいったそうだ。古参社員に尋ねてみた。「やはりオーナーの話には体が引き締まる。我々にとってみれば神様みたいな存在だ」。
≪人と会社≫
会社は建築物そのもの 人は部材
木造建築に例えると、人は柱・梁・桁である
『人が会社を創る』 『人で会社が決まる』
『人を会社は幸せにする』
「いやー、2代にわたって社内から社長を抜擢したが、サラリーマンが経営者になれないことがよーくわかった。経営者たるものは志がないと務まらない。志を支えるものは覚悟の気持ちである。だが、サラリーマンが社長になったからといって自動的に志・覚悟が身につくものではない。この歳(76歳)になって人財育成の困難さをあらためて悟った」と大木会長は率直に反省する。
わかりやすく言えばオーナー社長は非常時には自分の給料を会社に注ぎ込む。サラリーマン社長は高給を貰いながら、一定期間、地位に留まると安易な気持ちになり、会社は「永遠に続く」ものだと錯覚する。オーナー経営者は非常時には過去の経緯をかなぐり捨て、非情な措置(例えば首切り)を決断しなければならない場面にも、しばしば直面する。泣いて馬謖を斬ることから逃げられない。ところがサラリーマン社長の場合には「俺の先輩だから降格するに忍び難い」と勇断を先延ばしにし、解決する機会を逸することが多々ある。また、社内・社員との融和策のための資金として月額15万円の枠を設けるとする。この場合もサラリーマン社長は、社員との飲み食いに使わず自分の私的費用に回してしまったりなどする。サラリーマン社長は、意外と部下・社員たちが自分の一挙手一投足を眺めて品定めしていることには無頓着なのだ。
もともとは、大木会長の長男である大木孝一郎氏(4月1日代表取締役副社長)が次の社長になることが既定路線として決定されていた。しかし、同氏が32歳になったときに膠原病にとりつかれ、軌道修正を余儀なくされてしまった。繋ぎとして石川・田中両氏を社内から社長に抜擢する人事が決定されたのである。現在、孝一郎氏の体調は回復過程にあり「あと2年で完治できる」目処がついたことで、今回の人事辞令の断行となった。
社内抜擢された2人の社長に対する社員たちの反応を目撃しながら、孝一郎氏は多大なる学習をしたはずである。「やはり親父の血を引いた自分が起って頑張るしか、社員の奮闘を巻き起こすことはできない」との確信に至ったようだ。取材に対しても「天命が下ったと覚悟しています。体調を整えて2年後には必ず“副”を失くして名実ともに『社長』と呼ばれることができるよう、実力をつけたい」とコメントしてくれた。(続く)
<会社プロフィール>
大高建設株式会社
住所 福岡市博多区上牟田1丁目29番6号
設立 1975年3月 資本金 9,500万円
代表取締役社長兼会長 大木孝朋
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