事前対策が安上がり
―渡部社長は、住宅会社として瑕疵に対する不安はありますか。
渡部 瑕疵担保法が施行されることで、ユーザーはどんな建築会社に頼んでも安心の保証があります。業者は事故発生率が高くなりますと保険料率が高くなり、経営に支障をきたす恐れが発生しますので、事故予防する事前対策が大切だと思います。当たり前のことですが、安かろう、悪かろう的な住宅はダメで、正直に誠実に、そして理論を踏まえた住宅づくりが重要です。
とくに、先ほど須貝先生のおっしゃられた結露による耐震性や耐風性の劣化は雨漏りと勘違いしやすく、十分な対策が必要です。これからは、冬型結露よりも夏型結露の被害が多くなるような気がいたしますので、その予防を考えた家づくりが大切です。
いつも思うのですが、売上や利益の前に家づくりの哲学があり、その信念が市場に受け入れられてお客さまの満足度が高くなると、その分だけ利益が高くなっていくような気がしています。
須貝 少なくとも、躯体の小屋裏、床下、壁裏は空気を流しておく必要があります。
大石 最近多いのが、コンクリートからの初期放湿で、入居者の方が歩いて分かるくらい、新築1~2年の物件の床板がたわんでしまうことです。それで床下を開いてみるとカビだらけになっている。そうした場合、結局はその部分の作り替えとなり、ユーザーが非常に苦労すると思います。
換気がないために余計な労力がかかるし、ユーザーさんからの信頼も無くなってしまうことも考えれば、転ばぬ先の杖としての換気対策は必要だと思います。もともと換気性の高い構造をもつ住宅もあれば、立地や気候などで条件が変わってきますが、そうしたなかで換気システムを導入していただきたいと思い、そういう働きかけをしています。
―宇都社長のところは雨漏りするというクレームは過去にありませんか。
宇都 幸い当社はありませんが、今回の法律で大変なのは結露を除外するという点です。雨漏りではなく結露だったということになると、修繕費はすべて工務店さんの負担になるわけですから。結露で小屋裏にカビが生えているのをユーザーが知れば、全部建て替えてくれと言われてもおかしくはない損害となります。
今回の件は、結露の怖さを知っているからこそ法律上除外になったと思います。結露まで補填となると莫大な費用がかかります。それをどういうかたちで証明するかですよね。そのため、雨漏りか結露かをきちんと判別させる技術や、それを社内で教える専門家が必要になると思います。
工務店としては結露が発生したら大変なことになりますから、そういうことが起こらないように事前に換気などの対策をしておいた方が、よほど安上がりだと思います。
―結露だと保険がおりずに工務店が全額負担するという点が怖いわけですね。瑕疵が多くなってくると保険料が上がる可能性がありますし、技術的な指導を役所がしていくということで、思い通りの建築ができなくなる可能性もあります。
~続く~
【文・構成:大根田康介】
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