平和に慣れた日本に、まざまざと北朝鮮の脅威を見せつけた2日間だった。
「衛星打ち上げ」の予告期間二日目となる5日午前、北朝鮮が長距離弾道ミサイルとみられる「飛翔体」を発射した。切り離されたミサイルのブースターの1段目と2段目は、それぞれ日本海の秋田県沖と太平洋に落下したとされる。北朝鮮によるミサイルの恐怖はひとまず去った。しかし、いつまた繰り返されるか分からない北朝鮮の暴挙に不安は消えない。狂気の国家に対し、新たな対応が求められている。
危機管理の見直し
厳戒態勢で臨んだ政府をはじめ全国の自治体関係者は緊張の連続だったと思われる。そんな中、発射予定日初日の4日には、政府が信じられない「誤報」を流すという大失態を演じた。担当者の初歩的ミスにチェックが利かず、「飛翔体発射」の一報を緊急情報ネットワークシステム「Em-Net(エムネット)」で発信してしまったという。5分後に「誤探知」だったとして訂正したが、全国を混乱させてしまった。幸い二日目は落ち着いた対応で発射されたミサイルの情報を流したが、今回は北朝鮮による事前通告があったからこそできたことだ。
北朝鮮による日本への脅威としては、今回発射された「テポドン2」ではなく06年に連続発射された中距離弾道ミサイル「ノドン」の方が大きい。発射の精度も高く、すでに日本を射程圏内に捉えているのである。わが国に向けて「ノドン発射」が現実となった時、冷静な対応ができるかどうか、今回の防衛省や政府の対応では心もとない。危機管理のあり方について考え直すきっかけとなりそうだ。
国内での議論を
今回のミサイル発射では、幸い領域内における「人的」被害はなかった。しかし、「被害」が皆無だったわけではない。実際にミサイルが上空を通過した秋田県・岩手県など、東北各県の人々の心痛は察するに余り有る。なにしろ「命」の危険にさらされたのである。さらに、ミサイル通過が予定された海域では、ブースターなどの落下物に備え操業休止を余儀なくされた漁業をはじめ、経済的被害をこうむったケースは数え切れないとされる。政府や全国の自治体による北朝鮮ミサイルに対する対応は、国民の税金でまかなわれている。
「被害は甚大」といっても過言ではあるまい。北朝鮮はそれに対し補償どころか謝罪さえしない。「迎撃するなら報復する」とまで公言し、逆にわが国を恫喝したのだ。ならず者国家のゆえんである。進展しない拉致問題を含め、日本は北朝鮮にどのような態度で臨むべきか、改めて議論の必要があろう。「喉もと過ぎれば」とならないことが大切だ。
国際社会に求められる変化
各国の制止にも耳を貸そうとしない北朝鮮に対し、国際社会も対応への変化を求められている。今回の動きで、北朝鮮が長距離弾道ミサイルを発射することのできる一定の技術水準に達していることも明らかとなった。日本だけでなく周辺国や太平洋を挟んだ米国にとっても脅威が増したことになる。6カ国協議の重要性ばかりが叫ばれてきたが、国連を含めた大きな舞台で北朝鮮包囲網を形成する必要に迫られているのではないか。当然、中国・ロシア両国の北朝鮮擁護の姿勢にも変化を求めるべきだ。
他国民を平気で拉致し、返そうともしない国家に「言葉」が通じるとは思えないが、まずは外交努力で北朝鮮の暴発を押さえ込まねばならない。「武力をもって」ということになる前に・・・。
【秋月】
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