コーディネーター
佐藤俊郎氏 (株)環境デザイン機構代表取締役
出席者
武谷政道氏 (株)都市空間専務取締役
住吉修吾氏 麻生ラファージュセメント(株)取締役
森岡侑士氏 NPO法人デザイン都市・プロジェクト理事長
博多港の魅力を再認識し 人が集まる演出と工夫を
博多港は、生活港湾として私たちの生活に直結した多様な側面を持っている。湾全体を見ると、シーサイドももちの新しい都市空間や能古島、志賀島といった自然も豊かだ。しかし、福岡で暮らす人たちにとって、いまひとつ海や港が身近な存在ではないのはなぜなのか。まちづくりの視点から、博多港、博多湾と福岡という都市のこれからについて話し合った。
港湾化で街の原風景消滅
佐藤
これまで福岡、九州の発展を支えてきた博多港ですが、住んでいる人々にとっては、どうも福岡が「港町」であるという認識が乏しいように思えます。地理的に見ると、例えば上空からみるとバルセロナによく似ていて、港湾都市の様相です。でも、私たちがふだんの生活でそれをあまり感じることがないのはなぜなのでしょう?
住吉
私は東京の出身で、福岡に来てまだ2年半ですが、福岡、博多が海と結びついているイメージはありませんでした。いまはシーサイドももちに住んでいますが、ここに住んでみて博多のイメージが逆転するほど変わってしまいました。シーサイドももちに限って言えば、人工的ではありますが博多湾に面してつくられた街で、ここに住むと博多は海とともにあることがよくわかります。ただ、全体としては福岡、博多が海のイメージを発信していないのではないでしょうか。
佐藤
東京から飛行機で戻ってくると、着陸するときに見える博多湾には程よい大きさの島が2つあって実に美しい風景ですよね。
武谷
鶴が羽を広げたようですよね。海域的には静穏な海域ですが、排水の面からは、実は汚染されやすい形をしていて、下水道がまだ普及していなかった子どものころは博多湾で海水浴をしたことはなかったですね。いまでこそ、ももちの砂浜で遊べるようになってはいますが、埋め立て前の昔の百道海岸は泳ぐ場所ではありませんでした。
佐藤
穏やかな湾であることは良い港の条件なのでしょうか?
武谷
水深が浅いことが近代港湾としてはネックで、常に航路の浚渫が必要ですが、穏やかで安全であるということは良いことです。
佐藤
日本の近代港湾というのは、高度成長期に湾内を埋め立てて、そこに臨海工業地帯を形成するという歴史がありましたね。
森岡
その意味では、北九州市が工業都市として力をつけていたこともあって、博多港の位置づけは低かったのでしょう。博多港にはモノをつくる機能がありませんからね。しかし、他の港に負けてはいけないと、湾の中央部から埋め立てをしてふ頭やコンテナヤードをこれまで造ってきました。その過程で、博多湾の原風景ともいえる箱崎や百道の松原などが次々と消えていってしまいました。博多湾に限らず、福岡のまちづくりにはそういう面があるようですね。東京湾では湾岸線をすべて埋め立ててしまったことを、かなり以前から反省しているようですが、博多湾でも似たようなことがミクロで起こっているのではないでしょうか。
つづく
※記事へのご意見はこちら