監査法人にとって好景気に沸いた2008年度の上場企業の決算監査の実態は一部の企業を除いて楽勝であった。ところが2009年の上場企業の決算はまさしく地獄に転落したようなものだ。確かに百年に一度の経済恐慌に遭遇している背景もあり大半が赤字に陥る雲行きである。そうなると企業側は架空売上・架利益の計上や内部統制違反などの画策を図るようになる。これを発見する能力が監査法人に求められる。
監査法人の中では数人ずつのチームに分かれて企業を担当している。今年は特に不動産、建設業を担当している監査チームは大変である。安易な監査証明を出した後に倒産となれば監査法人に対する信頼が失墜する。加えて、倒産企業の株主による責任追及も予想される。一方監査証明の拒否や継続企業の疑義(ゴーイングコンーサン)を表明すればその会社の株価が大幅に下落する懸念がある。ひいては倒産の引き金になる可能性も高い。倒産すれば監査報酬がもらえなくなる上、取引先を失う痛手も大きい。赤字決算の企業を担当する公認会計士はハムレットの心境で株主総会に臨まなくてはならなくなる。まさに地獄の淵に立たせられている様相だ。
【北山 譲】
*記事へのご意見はこちら
※記事へのご意見はこちら