木質建材業界
建設業界、特に住宅関連業界はマンション市況の暴落に始まり、戸建注文住宅までまさに土砂降り状態だ。新設住宅着工戸数は1月▲16.1%、2月▲24.9%と減少幅を広げており、2月の数字は季節調整済みの年率換算すると80万戸台に突入した。2月の建築確認申請数も大きく減少しており3月以降も着工戸数の低迷は免れそうもない。こうした情勢下、将来を見据えて着々と布石を打ち、好収益を挙げている企業がある。前回(弊誌4月2日、6日号)までに取り上げた越智産業、市岡、高千穂、キユーハウがそれである。
時代の変化に合わせた成長への戦略
越智産業(株)は、北九州市の村井新建材の買収を皮切りに香川県の四国新建材センターも買収し、福岡証券取引所に上場した。その後もM&Aを続け、前々期のグループ売上高は780億円(今3月期は750億円の予想)に達するまでになった。また、これまでは同じ木質建材関連企業の買収であったが、昨年末に北海道の家庭金物卸商の(株)松井を買収。これまでの木質建材卸商から、家庭用品を含む総合住生活商品取扱業へとウイングを広げた。松井は2008年1月期に売上高55億9,000万円、経常利益1億400万円を計上するほどの優良会社であり、北海道、東北地区を営業基盤としている。越智産業はこれを機に東北・北海道進出への足がかりと、家庭金物分野への進出という二つの果実を得たことになる。同業者のジャパン建材を傘下にもつJKホールディングス(売上2,800億円、当期利益▲2億円)やジューテック(売上1,400億円、当期利益▲23億5,000万円)、すてきナイスグループ(売上2,450億円、当期利益▲23億円)など、今年の3月期で大幅な赤字を計上する予想の業界環境のなか、越智産業も何とか赤字を免れようと奮戦(売上750億円、当期利益3,000万円予想)できるのも、松井などのM&A戦略が功を奏しているといえる。越智通広社長も、規模を追わず実利で勝負と言うように、収益重視の経営に回帰するために業態転換を図っている。異業種(周辺型)のM&Aのほかにも、新築需要が落ち込みに対応してリフォーム分野を強化したり、ペット同居型の住宅増で少子化への対応を図るなど、時代の変化に合わせながら成長を続ける戦略だ。
改善・改良が生んだ高品質と高収益体質
(株)市岡はそれまでの銘木商から木材プレカット加工業へと業態転換に成功した企業のひとつだ。(株)キユーハウと共に九州地区の木材プレカット加工の先駆者である。
同社はプレカット事業を軌道に乗せる(工場稼働率維持)ために大手住宅メーカーや部材メーカーとの提携を行ないながらも、地場住宅会社や工務店に働きかけ、プレカット材の採用を説いてまわった。このことが熟練工不足を補うとともに構造強度でも大手プレハブメーカーの品質と伍して戦え得る在来木造住宅の提供を可能にした功績は大きい。
当初は部材の拾いミスや加工ミスも多発したが、現場での手待ちを最小限に留めるために手加工してでも、短時間で不足材を現場に届けるという誠意を見せた。
こうしたことが同社の信用につながり、同時に何故ミスが発生したかを追求し改善、改良を続けてきた。こうして同社の技術・品質の良さとコストダウンを実現し高収益体質を作り上げたのだ。同社の家業であった銘木の取扱はゼロになっている。
同じことが(株)キユーハウについてもいえる。
同社の先代社長の岩永清氏は、住友林業住宅や旭化成ホームズの指定納入業者当時に「最大の建材運搬業者」とうそぶいていた。これは大手住宅メーカーの設計者が選択した部材を、指定日時に現場にジャスト・イン・タイムに搬入するだけで、自社の知恵や工夫を活かす余地がないことを嘆いていたのだろうと思う。いち早くプレカット加工に乗り出したのも、これからの業界の変化を素早く読み取ってのチャレンジであった。試行錯誤を繰り返しながら興栄開発やみぞえ住宅などからプレカット加工の専門者をスカウトし、ノウハウの蓄積に励んできた。
【徳島 盛】
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