進化する独自の商品戦略
店内加工には店頭出し時刻の徹底、売場の分類や棚割の遵守、製造スタッフの戦力化など、たとえシステムが定着してもオペレーションの課題が恒久的に残る。
また製造マニュアルを正確に守り、商品の質・味を標準化し、どの店も同じ商品を提供することが不可欠になる。
そのため、同社では新店はもとより既存店でも徹底した研修体制を敷いている。パンの場合、新店ではオーナーやパートスタッフ向けに10日間、1日8時間の集中研修を実施。さらに開店の前後にそれぞれ1ヵ月のフォロー研修も行なわれる。
また次々と新商品やレシピが追加されるので、既存店ではさらに2ヵ月に1回、地区ごとに会場を貸し切った勉強会も開催されている。
こうした地道な努力もと、売り出される新商品は、柔らかい食感が絶妙なふわふわパン、1枚で4つの味が楽しめるピザホールなど、どれもオリジナリティ溢れるものばかり。
アイデアはもちろん、味や形状でもデパ地下のベーカリーコーナーと遜色ないレベルで、同社の競争力を象徴する商品になっている。
店内加工品は鮮度が高いぶん、「焼きたて」「作りたて」という表現に現実味があり、消費者も実際の味からそれを実感できる。また、自店で製造量をコントロールできるため、昨今問題となっている廃棄ロスを低減。同社にとっては大手との差別化を図る上で、重要な武器となっているのは言うまでもない。
地産地消の商品づくりに注力
エブリワンは地産地消にも積極的に取り組んでいる。
本社がある熊本は、阿蘇や天草などの大自然に囲まれた、新鮮な食材の宝庫だ。同社はこうした地域の食材を定番商品や企画商品に採用し、年間に数億円規模でオリジナル商品を販売している。
独自企画の「ばくだんおにぎり」を、ヒット商品として定番化させる一方、地域の食材を取り入れた派生商品も登場。6月に実施される沖縄フェア向け「琉華豚ばくだんおにぎり」、地元ラーメン店が監修する「黒亭ばくだん」など、開発の勢いは留まることを知らない。
さらにこの4月から販売される地域限定の「三昧弁当」も、地元食材をふんだんに使ったもので各県のエブリワン限定品だ。
熊本地区で先行販売される「熊本三昧弁当」は、馬ホルモンや肥後赤鶏のステーキ、熊本やつしろJAグループのブランド野菜「はちべえトマト」を用いたパスタ、天草産ひじきの佃煮などからなる豪華版。
これらの商品はボリュームや内容もさることながら、地産地消に力を入れる同社の考えがお客にストレートに伝わる。
また、熊本は酪農が盛んな土地柄、阿蘇小国のジャージー牛乳はブランドになっている。
同社はこれを使用したメロンパンも4月に発売。コラーゲンとヒアルロン酸を入れたビューティメロンパンと抱き合わせ、ベーカリーコーナーの強力な商材に位置づけている。(つづく)
【釼 英雄】
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