9日、福岡市が情報公開請求された公文書について、関係職員への確認もせずに「非公開」の決定を下していたことが明らかとなった。非常識な対応に、識者からも非難の声が上がっている。
データマックス取材班が3月27日付けで公文書公開請求したのは、「アイランドシティ整備事業及び市立病院統合移転事業の検証・検討チームの一員であった職員が保有する検証・検討に関する文書の全て」。これに対し、福岡市は4月7日になって請求者に「公文書
非公開決定通知書」を発送した。通知書では「公開請求に係る公文書を保有していない」としたうえで、その理由として「請求に係る文書は福岡市情報公開条例第2条で定義する公文書に該当しない」と記されていた。同条例第2条では、公文書の定義について「実施機関の職員が職務上作成し、又は取得した文書、図画、写真、フィルム及び電磁的記録であって、当該実施機関の職員が組織的に用いるものとして、当該実施機関が保有しているものをいう」(一部省略)と規定している。検証・検討チームの職員が「検証・検討」作業のため記した文書やデータを何ひとつ保有していないのなら、単に「不存在」とすればよい。同じ不存在でも第2条を非開示理由にあてたということは、「
職員個々が所有する文書は存在するが、公文書ではない」ということになる。
担当の市総務企画局企画調整部企画課に、検証・検討チームに所属していた
個々の職員に文書保有の有無を聞いたうえでの非公開決定かどうか確認したところ「(個々の職員には)
聞いていない」という。確認もせずにどうして文書が存在しないと分かるのかと尋ねると、個々の職員が保有する文書は公文書には含まれないから聞く必要がないと言い始めた。前述の条例第2条を盾にしたつもりらしいが、検証・検討チームの職員がその職務のため作成した文書は、たとえメモであっても、目的が「検証・検討」であれば公文書なのである。同チームが解散し、総務企画局に引き継がれた文書類だけがその全てではない。職場が変わっても、個々の職員が請求された文書を保有している可能性は大である。むしろ何もないというほうがおかしい。
関係職員に事実関係の確認もせずに「不存在」とするのでは、組織的隠蔽を図っているとしか思えない。
今回のケースについて市民オンブズマン福岡の児島研二・代表幹事に話を聞いた。児島代表幹事は、福岡県庁による裏金問題についての判例をあげながら「決済印がない文書でも『検証・検討』のために作成されたものは全て対象となる公文書です。裏金問題の時は封筒の裏側に書かれた走り書きやメモまで公文書と認定されました。個人が保有する文書であっても、目的があって作成されたものは公開の対象でしょう。ましてや関係する職員に話も聞かずに不存在とするのは、明らかに間違いです」と解説してくれた。
福岡市は現在、吉田福岡市長らがこども病院人工島移転に絡み、同病院の現地建て替え工事費を水増しした折の文書を捨てたとして「公文書毀棄」の容疑で刑事告発されている。市側は、職員が個人的に作成したメモなどは公文書に当たらないとしているため、今回の請求に対しても同様の論法で「非開示」とするしかなかったと思われる。杜撰ということではなく、「
組織的な隠蔽」が疑われる問題である。市の情報公開に対する積極的姿勢は吉田市政になって明らかに後退した。この問題について、さらに検証してみたい。
(つづく)
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