ICに望まれた構想の柱
佐藤
アイランドシティのまちづくりについては、既に住宅など建って人が住み始めていますが、どう思われていますか。
森岡
本来ならば島全体の大きな柱となる構想があって、それにあわせて開発を考えていくべきだったでしょう。例えば検討段階では面白いプランがいくつか挙がっていました。 島全体を医療センターにする、大学を誘致する、世界のアニメセンターにするなど、なかには民間からの提案でかなり具体的なプランができているものもありました。島全体を畑にしたいという申し出もあったそうですよ。しかしそうした案はことごとく採算の問題でつぶれていきました。行政としては「土地を売却して採算をとらないといけない」ということです。建設業界の方に聞いたことがありますが、東京であれば埋め立てて土地をつくれば埋め立てにかかる費用よりもはるかに高く売れるので事業として成り立つが、福岡の地価では行政がいくらがんばっても採算がとれるのは困難だということですね。
佐藤
だから、最初から利益を望むのではなく、「これだけ赤字ですが、しかしそれに見合う、またはそれ以上市民のためになる場所にする」ということで具体的なプランがあれば、市民もその赤字は納得したのではないでしょうか。私の考えでは、本来、あの土地はあそこにあってはならない土地です。ですから、住民を住まわせない前提で、例えばごみ処理場など福岡市内の迷惑施設をすべて集約する、というのも1つの利用法だったかと思います。市民の生活から隔離された環境であることで島も生きるし、移転後の跡地はそれぞれの地域で有効活用すれば、市民にも喜ばれたと思います。つまり、実際に迷惑施設を集めることが可能かどうかは別にしても、この島の成り立ちをきちんと整理した上で、福岡市と市民のためになる明確なコンセプトを与えてあげることが必要だったのではないでしょうか。
つづく
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