福岡市役所が、人工島事業検証・検討チームの「職員が保有する文書」について情報公開請求を受けながら、文書の存否について関係職員への確認もせずに非公開決定をしていたことは、知られたくない検証・検討の過程を組織的に隠蔽している証左である。
福岡市側は、確認もとらぬまま、検証・検討チームの職員が当該文書を保有している事実はないと断定した。その根拠は、職員が検証・検討で作成・共有した文書は総務企画局が全て引き継いでおり、同局の担当課に残された文書こそが原本で、それだけが「公文書」だというもの。したがって個人保有の文書があるはずもないし、あえて個々の職員に聞く必要もないのだとする。
しかし、この論法はあまりに乱暴であろう。第一、検証・検討で作成・共有された文書が、全て総務企画局に引き継がれたという証拠は何も示されていない。共有された文書やデータのうち、チームが解散したあと、個人で保有したままになっているものがあるかもしれない。「チーム全員に聞き取りを行なったが、何も持ち合わせていない」というのならまだ分かるが、聞く必要がないと突っぱねるのは、「個人保有の文書はある。あるが出せない」ということに他ならない。文書の存在を隠すために、「総務企画局が保有するものが全て」という強弁を続けるしかなくなっているのである。だからこそ、情報公開条例の第2条を持ち出したのだろう。
検証・検討チームといっても10人に満たない人数である。ひとりずつ聞いても三日とかからない。担当課はデータマックスの抗議に対し、情報公開室と相談するとしているが、一度出した決定は重い。これから聞き取りを行なってとしても、一旦隠蔽体質を露呈しているだけに内容が変わるとは思えない。なにより、公文書毀棄の容疑で市長らが刑事告発されたことが今回の「非公開」につながっていることは明らか。いまさら個人保有の文書を「公文書」とは言えないのだ。しかし、突っぱねれば突っぱねるほど不利になるということが理解できないらしい。
「公文書として残されたものが全て」という福岡市の論法には無理がある。情報公開請求者が求めているのは「引継ぎを忘れたか、あるいは共有したが引き継がなかった文書があるのではないか」という点。当然、検証・検討チームに確認するべきで、確認しなければ「公開」か「非公開」かの決定はできない。子どもでも分かる理屈だろう。市役所側の言い分を世間では「屁理屈」というのだ。
「検証・検討」のいい加減さは「現地建て替え工事費」の問題だけではない。何度も報じてきたが、当初、検証・検討チームの会議の「議事録」は作成されていなかった。データマックス市政取材班がそのことを指摘したため、急遽、議事録が作られた経緯がある。黙っていたら議事録さえ作成されなかっただろう。
政策決定過程をオープンにすることの大切さを訴えて当選した吉田市長だが、市政運営の実態は「組織的隠蔽」でしかない。実は、隠された事実はこれだけではない。
【市政取材班】
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