地方コンビニの生き残り策とは
コンビニエンスストアは利便性という社会のニーズに対応することで、今日の消費生活
に密着して店舗や業容を拡大していった。
日本フランチャイズ協会によると、2008年度のコンビニの総売上高は、対前年比6.7%増の7兆8,566億円。全国のコンビニが売上高の公表を始めた98年以降10年連続のプラスで、百貨店売上高(7兆3,713億円)を初めて上回った。
しかし一方では、既存店の前年割れが8年連続で続き、売上げは増えない状況にある。それに加え、経済危機の影響がコンビニにも押し寄せ、お客は必要なものしか購入しない傾向が顕著になっている。一人勝ちのコンビニにも不景気の影響が現れ始めているのは間違いない。
そこで改めてコンビニに求められるのは何か。
それは紛れもなく変化に対応する力であり、地方の市場を攻略してきたエブリワンにとってまさに得意とするところだ。それについて冨田晋社長は「地域密着に焦点を当てながら、対応していくしかない」という。
コンビニの収益の柱である弁当や惣菜。これは地域によって好みの味が異なり、全国一律のレシピは通用しない。それを知っているのはローカルチェーンである同社の強みだ。
また、地産地消も同社はスローガンだけに留めることなく、地元の生産者やベンダーとがっちり手を組んで実践している。今後はその地産地消を自店の業容にいかにきめ細かく落とし込むかがカギになるだろう。
メリットのない時間短縮と値引き
昨年はコンビニの24時間営業の是非、最近では加盟店に対する値引き問題の制限がメディアを賑わせた。そこにはCO2排出削減や防犯防災、廃棄物の削減などの問題が絡むことから、コンビニがやり玉に挙げられた格好だ。
しかし、CO2排出削減は稚拙な日本外交のため、義務を課せられた結果という専門家もおり、値引きは発注や廃棄ロスと一緒に考えなければならない問題である。
冨田社長は「日配品の製造や物流は24時間営業に合わせた体制。18時間営業でもコストはそれほど変わらず、経営する側にも雇用される側にもメリットはない」という。
仮に営業時間が短縮されれば工場の稼働が減り、製造スタッフやトラック運転手の雇用にも影響が出る。それでは地域に貢献する地域密着の戦略も崩れかねない。
また値引き問題についても冨田社長は「値引きすれば、お客さんはそれに合わせた購買行動を取り、加盟店も本部も収益を確保できず、やっていけなくなる」と警鐘をならす。スーパーでも特売日にお客が殺到するのだから、コンビニがそうならないとも限らない。数を売る店なら利益は確保できるだろうが、商品を絞り込むコンビニには致命的だ。
独立独歩の戦略と地域密着で成長してきたエブリワン。それは変化するお客への対応力も育んできた。変化対応の巧さは厳しい経営環境の中で、生き残るカギになるはずである。
【釼 英雄】
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