CRC 企業再建・承継コンサルタント協同組合による 「企業再生の現場から!!」
経営は人なり!! 資金対策は最も経営者の人間力が問われる!!
銀行が融資を審査する際の基本的な原理原則は、「公共性(コンプライアンス)」「成長性」「安定性」「収益性」であり、個別には「総合的な債務償還能力」「保全(担保力)」「その案件の銀行メリット」です。以前はこれらに「取引歴」「経営者の属性」など、いわゆる属人的な定性的判断を加え、総合的に判断していましたが、昨今では前述の「安定性」や「償還能力」といった定量的判断のみを重要視するようになっています。
そのように銀行の考え方が変化したのは、1998年以降、取引先に対する銀行の見方が金融庁の金融検査マニュアル(以下「マニュアル」)に縛られるようになったからです。銀行がマニュアルを無視した経営を行なうと、場合によっては「業務改善命令」といった罰則が下り、その銀行自体の信用失墜、ひいては経営悪化を招くことがあり得るのです。
では、マニュアルとはどのようなものなのでしょうか。ちなみに、マニュアル自体は金融庁のホームページからダウンロードできますので、一度ご覧になるといいでしょう。ただし専門用語が多く、少々難解かもしれません。今回はマニュアルの位置付け、内容について分かりやすく解説します。
まず、「マニュアルに縛られる金融機関」とはどのようなところでしょうか。金融庁は毎年定期的に銀行の経営状況について検査に入ります。その際、マニュアルに沿った経営、信用リスク管理がなされているかどうかをチェックします。これがいわゆる「金融庁の検査」です。
対象となる金融機関は都市銀行、地方銀行、信用金庫、信用組合、農林中金などで、預金の受け入れをしている金融機関のすべてです。
一方で、例えばノンバンク、ベンチャーキャピタル、投資家、政府系金融機関、信用保証協会といった預金の受け入れのない金融機関は、一部金融庁の管轄ではあっても、「マニュアルには縛られない」と考えて差し支えありません。実際に借りる側から見ると、例えば不動産案件であれば、そのプロジェクトの成立見込み、不動産の評価などがポイントとなるため、マニュアルに縛られない金融機関の方が貸出可否判断の根拠が分かりやすいといえます。
また、同じマニュアルで縛られている金融機関でも、都市銀行と地方銀行・信用金庫では扱いが異なる場合があります。都市銀行は「金利は安いが、雨が降ったら傘を奪うところ」、地銀・信金は「金利は若干高めだが、暴風雨になっても傘が壊れるぎりぎりまで傘を奪わないところ」といったところでしょうか。
各金融機関はマニュアルを基に、独自に貸出先の判断基準(自己査定、債務者区分、債務者格付のマニュアル)を作っています。その視点を日本の金融システム全体に置いている都市銀行と、地域の経済発展と雇用の維持に置いている地銀・信金では、明らかに実際の運用が違うということです。もちろん同じマニュアルを基本にしているので、いずれにしても「雨が降ったら傘は貸せない」ことに変わりはありません。ただし、少なくとも傘を奪うタイミングについては、大きく違うといってもいいでしょう。
中小企業の経営者の方々には、1行でも構わないので、都市銀行以外の地銀・信金とのお付き合いをお勧めします。自分のサイズに合った銀行との付き合いを続けていくことで、その地域の情報を得ることができ、「お金を借りる」以上の付き合いも可能になっていきます。最後まで面倒を見てくれるのは、やはり地元の金融機関です。
CRC 企業再建・承継コンサルタント協同組合
協力: 建通新聞社 http://www.kentsu.co.jp/
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