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倒産を追う (株)イケガミ (上)
特別取材
2009年4月17日 13:03

取引先も社員も困惑させたモラル欠如の倒産劇に非難集まる

(株)イケガミ
代 表:池上 邦俊
所在地:福岡市東区多の津1-4-6
設 立:1973年2月
資本金:3,000万円
年 商:(08/3)17億890万円

 3月31日、(株)イケガミ本社に債権者が集まってきた。すでに社員には帰宅命令が出されており、事務所は閉まったままである。「長年に渡って付き合いしてきた恩を仇で返された!」。取引業者からは怒りの声が上がっていた。社員は取引先からの電話にどう対応していいか分からず困惑していた。身勝手な経営者一族に振り回された社員と取引先にとっては、悪夢のような一日となった。

<取引先と社員を混乱に陥れた破綻当日>
 大口取引先のある企業は、(株)イケガミの経営破綻が表面化した当日、社員総出で住所が分かっているイケガミの社員の家に張り付いていたという。すでに3月末の資金ショートが噂されていたためだ。
 3月上旬には同社の信用不安が巷で噂になっていた。「3月もしくは4月に行き詰まるのではないか」。経営破綻を予想した取引先も債権保全のための動きを活発化させていた。毎期、売上高が右肩下がりの状況で利益は僅か。こうした業績の悪化に加えて、ある手形の存在が信用不安に拍車を掛けていた。成因が判然としない同社振り出しの手形がノンバンクに出回ったのである。同社が売り掛け先に対して支払いを早めてもらう打診をするなど、資金繰りの厳しさが徐々に表面化し始めていた時期でもあった。
 3月末の破綻当日、社員は同日の決済ができない旨を告げられ、家に帰された。社長は1週間前から会社には出てきていない。同日の午後6時から社長が社員に対して説明を行なうとの話であり、社員は再度出社する予定だったが、「債権者が集まっているから中止する」との連絡があり、同日の説明は取りやめになった。債権者が集まっているから中止というのは、債権者から逃げたい一心だったのだろうか。取引先にも社員にもまともな説明すらないまま事業を停止した同社。一般的にはできる限り混乱を避けるべく、経営陣が取引先や社員に対して説明を行なうものだが、そうした考えは池上一族にはなかったようだ。

<売上確保のために収益悪化の悪循環へ>
 イケガミは1973年2月、池上邦俊氏が金物建材や工具類の販売を目的に、それまで勤務していたマックス(株)の支援を得て設立したもの。九州一円の内装業者を対象に、金物建材や工具類の販売のほか、軽天工事や板金工事など内装工事関係も積極的に請け負ってきた。地場中堅業者に数えられるまでに成長した同社だったが、近年は建築業界の悪化もあり徐々に利益率の低下が進んできた。このため「脱・下請け」を目指し、新たな事業展開も見せ始める。石英(ガラスの主成分)に酵素を配合し、ガラスを常温で液状化させた完全無機な新素材「液体ガラス」がそれだ。九州では施工実績が少ないこの商品を、同社は新規事業として本格的に取り組み始めた。だが落ち込む業績をカバーできるほどの事業に育つまでには至らなかった。  同社の近年の売上高は18~20億円。うち3.5~5億円程度が工事売上高で、残りが販売売上という構成だったようだ。関係者によれば「工事売上はあまり変化が無いが、販売売上が年々落ち込んでいた」という。06年3月期の20億円の売上高が、07年3月期19億円、08年3月期では17億円となっており、この目減り分は販売売上の減少分だと考えられる。絶対的な売上の減少に悩まされ始めた同社は、徐々に利益を度外視した受注に走るようになる。関係者からは「受注先との価格交渉中、あと少し待てば相応の単価で受注できるのに、安くてもいいからとにかく早く発注書をもらってくれと言われ、安値受注をしたこともあった」「こうした資金繰りのための受注が薄利体質に拍車を掛けた」といった話が聞かれた。(つづく)


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