「うちのお酒を愛してくださった方々には本当に申し訳ない事をしたと思います。(三笠フーズ事件が起きた)あの時、何で本当の事を言ってくれなかったのか。(社長に)裏切られた気がしてなりません」。4月1日に電話取材を行った際の従業員の言葉である。悲しみに満ちた声だった。
三笠フーズ事件の後、信用回復に向けて奮闘する同社の姿が多くのメディアによって流されていた。一時期は10分の1まで落ち込んでいた売上高は今年3月には約6割まで回復。熊本県をはじめとする関係機関からも応援を受け、回復軌道に乗りかけていたが、従業員の努力も含め全てが水泡に帰してしまった。
昨年8月の三笠フーズの事故米問題で被害者として扱われた同社であったが、今年3月31日に三笠フーズと共謀して30年以上前から裏金作りを行なっていた事実を公表。悲劇の酒造会社から一転、消費者をだました「加害者」へ。非難の声が上がる中、取引先からの返品が相次ぎ、事業存続が危ぶまれていた。
福岡市で働くある熊本県出身者は絞り出すように「悔しい」と一言。地元熊本県で愛されつづけ、全国にもその名を知られた「美少年」。その転落に複雑な思いが交錯する。
【矢野寛之】
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