福岡市港湾局長 岩瀬 信一郎氏
歴史的にアジアとの窓口であった博多港。グローバル化の中で、その役割に対する期待は一層高まっている。そうした期待に応えるため、福岡市港湾局は港の整備、管理・運営、集客などに取り組んでいる。「博多港の発展なくして福岡市の発展なしという思いです」と語る岩瀬信一郎港湾局長(肩書きはインタビュー当時)に博多港の現状と課題、九州・アジア新時代の交流拠点都市づくりの中での役割などについて伺った。
アジア・世界につながる港づくり
――アジアに巨大港湾が誕生する中で、何が博多港の強みであり、それをどう伸ばしていくべきだとお考えですか。
岩瀬
博多港の強みは、北米航路、ヨーロッパ航路があり、9万t、8000TEU積みといった大型コンテナ船にも対応できる港湾施設があることです。日本の中で中国、韓国に最も近いのも強みです。その強みを生かして、大陸からの荷物、日本各地からの荷物を博多港に集めたいと思っています。上海・博多間28時間の高速RORO船もありますから。
人流面では、外国航路船舶乗降人員数が93年以来連続で日本一となっており、今後も中国発着のクルーズ船の誘致を進めていきたいと思っています。
――まちづくりの中で博多港をどう位置付け、市民に親しんでもらうかという点については、どのようにお考えですか。
岩瀬
横浜や神戸は「みなと横浜」「みなと神戸」と呼ばれますが、「みなと福岡」とは呼ばれませんよね。横浜市には港の見える丘がありますが、福岡市の場合、まちの中心から港が離れています。市民の皆さんが海を意識することがなかなかありませんので、ウォーターフロントをもう少し整備して、中央ふ頭、博多ふ頭、須崎ふ頭とまちとの境界部分のまちづくりとセットで展開していく必要があるだろうと思います。
また、福岡市の市内総生産や税収、雇用に対して、港が大きく貢献していることをPR していくことも必要でしょうね。博多港の発展なくして福岡市の発展なしと私どもは思っていますから。
――世界との結び付きの中での博多港の未来像については、どのようにイメージされていますか。
岩瀬
昨年秋のリーマンショック以降、世界同時不況になり、経済が停滞していますが、今後インド、ロシア、ブラジルなどの新興国がどんどん発展していくでしょうし、世界経済はますますグローバル化していくだろうと思います。その中でアジア域内の水平分業も進んで、日本から中国に部品を運び、中国で組み立てて世界に輸出するとか、逆に中国から日本に部品を入れ、日本で組み立てて世界に出すといった物流がかなり増えると思います。今は韓国、中国が中心ですが、福岡県や福岡市もインドとの交流を広げており、物流の需要も出てくると思います。また、KTXや九州新幹線の整備によって、人流もますます増えるでしょう。
そういう意味では、アジアをにらみながら、将来展望としては世界をにらみながら、その活力をいかに取り込んでいくか、物流・人流をいかに増やしていくかを考えていく必要があると思います。まずはアジアですが、アジアを基点に世界につながる港づくりをやっていきます。(了)
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