北九州の大学経営者に聞く
― 北九州市立大学阿南理事長
≪従来の消化剤の約20分の1の水で済む画期的な消火剤をシャボン玉石鹸さんと開発した。こうした成功事例を広げていきたい。≫
地元八幡製鐵所の出身でもある阿南理事長に、北九州市立大学の産学連携について聞いた。
阿南理事長―
私はこの3月まで(財)北九州産業学術推進機構(FAIS)の理事長も兼務しておりました。
2001年4月のスタート時から8年間で学術研究都市としての土台を築くことができたと思います。
モノ作り都市、環境モデル都市として大学や研究機関が、地域経済のために積極的に産学連携に取組まなければならないことは言うまでもありません。
これまでも本学の国際環境工学部をはじめとした地域の研究機関が、北九州市の環境問題解決に果たしてきた役割は大変大きいと自負しています。
北九州ならではの産学の強い結びつきが着実に成果を挙げてきていると思います。
最近では、若松のシャボン玉石鹸さんと新しい泡消化剤を開発しています。
これは従来の消化剤の約20分の1の水で済む画期的な消火剤で、市消防局の協力も得ながら出来た産官学協力の成功モデルだと思います。
先日も成田空港で航空機の事故火災が発生しましたが、多くの水を必要とせず消化作業ができるので、全国の消防から多くの引き合いをいただいていると聞いています。
この他に、新エネルギー分野では燃料電池、太陽電池の研究、話題のロボット分野では深海まで潜れるロボットの開発、安全安心のためのカーエレクトロニクスの研究など、北九州で競争力のある産業と密接に結びついた研究に本学の先生方は取組んでいます。
しかし産学連携で実際に成果を挙げるのはまだ大きな壁があるのではないでしょうか。
阿南理事長―
確かに大学発ベンチャーを含めて、大学のシーズと企業のニーズが噛み合い、実際のマーケットで「売れる」実用化までには「デスバレー」があると言われています。
しかしこの谷は、双方の努力で埋めていけるものです。
研究開発から実用化までには、多くの時間と費用、量産のためには更に莫大なコストがかかってきます。
一番大きな問題は、そうした過程を支える資金・ファンドがまだ十分でないこと、そしてどのように市場の開拓を進めるかだと思います。(つづく)
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