「福祉」を食い物にしていたのが、社会的にも規範となるべき「上場企業」ばかりだったことで、改めてこの国のレベルの低下を思い知らされた。
ベスト電器(福岡市・東証一部)、博報堂(東京都・東証一部「博報堂DYホールディングス」の連結子会社)、ウイルコ(石川県白山市・東証二部)、プライム(名古屋市・ジャスダック)。障害者団体向けの郵便割引制度(心身障害者用低料第3種郵便物制度)を悪用していたことが判明しているのは、名だたる上場企業ばかりである。事件を受けた各社のホームページには、取って付けたように「コンプライアンス」の言葉が並ぶ。しかし、多くの人たちは「しらじらしい」と感じているのではないだろうか。
各社の言い分は「法律違反になるとの認識はなかった」とするものばかりである。しかし、ダイレクトメール(DM)発送が社業の発展に直結する企業や、広告関連企業にとって郵便割引制度を熟知することは不可欠の要素である。通常、DM発送にあたって承認を受ける第3種郵便物の中でも「心身障害者用低料第3種郵便」はさらに厳しい条件が付けられる。なにより「障害者団体」としての活動実態がなければ承認を受ける資格がない。摘発された自称・障害者団体「白山会」や同「健康フォーラム」には、その活動実態がなかったことが明らかになっており、各社がその事実を「知らなかった」というならお粗末というしかない。
「障害者団体の活動の啓蒙になると思った」(17日・記者会見)とするベスト電器の濱田孝社長の発言に至っては、障害者団体ひいては「福祉」に対する認識の低さを露呈したものにすぎない。開き直りとも取れるベスト電器の姿勢は、反社会的であり、市場から資金を集める資格を欠くものであろう。つまり上場企業であり続けることに疑問が生じているということだ。もちろんばかの一つ覚えのように「コンプライアンス」と叫んでいれば済む話ではなく、事件に連座した「上場企業」各社は、真相を速やかに公表すべきである。「法令違反であるとの認識がなかった」と言い訳そのものが、すでに「コンプライアンス」の精神に反しているのである。上場企業による相次ぐ不正発覚は、日本の経済界そのものの信用失墜につながることを忘れてはならない。
【頭山】
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