CRC 企業再建・承継コンサルタント協同組合による 「企業再生の現場から!!」
経営は人なり!! 資金対策は最も経営者の人間力が問われる!!
銀行は、顧客から出された決算書を、決してうのみにはしません。前回説明した通り、特に貸借対照表の資産項目について、現在の価値や売掛金などの回収可能性に基づいた補正を行います。この「実態バランス」を基本としながら債務者区分を判定し、その顧客への対応を決めていきます。
まず決算書の仕組みを、あらためて簡単に解説します。決算書には貸借対照表(バランスシート)と損益計算書があります。貸借対照表は会社の決算時点での資産と負債状況が一目で把握できるもの。損益計算書はその会社が1年間でいくら利益を出したか、またはいくら損をしたかを表しているものです。
このうち貸借対照表については、見方が分からず、理解が困難と考えている経営者の方も少なくないようです。貸借対照表を一言で表わすと、左側が「決算時点での会社の資産」、右側が「その資産が誰のお金で成り立っているか(純資産の部=自分のお金、負債の部=他人から借りたもの)を表わすもの」となります。
では銀行は建設・不動産業の決算書をどのように見ているのでしょうか。原則的にはすべての資産・負債を詳しく見ることになりますが、ここではポイントを絞って確認してみましょう。
特に公共工事を請け負っている建設・土木業者は、行政の経営事項審査の点数を意識しないわけにはいきません。こうした業者については、「粉飾はないまでも、できる範囲で数字を良くしている」と見る傾向があります。例えば、「売り上げの水増しはしないまでも、翌期に計上すべき売り上げを今期に計上していないか」など厳しくチェックを入れていきます。
また、民間不動産デベロッパーの倒産が相次いでいることもあり、未成工事支出金(一般の会社の売掛金)や受取手形といった自社の取引先に関わる債権の中身についても、詳しくチェックされることが多くなっています。万が一、倒産先や債務超過の取引先の債権を抱えている場合は、実態バランスでその勘定は「0」と見なされます。
不動産業の固定資産・商品在庫については、不動産路線価や再建築価格、収益価格などを基に、1物件ずつ現在の時価を算出します。特に販売用不動産については、(1)開発や建設の進捗状況 (2)市場実勢に比較した販売予定価格の適・不適 (3)在庫となってからの期間―なども踏まえ、売却見込みに基づく評価替えを行うなど厳しいチェックを行っていきます。
資産の中で金額・影響が大きいものや、関連会社への出資金といった投資勘定についても詳しくチェックします。例えば、出資している関連会社が業績不振であると、場合によってはその勘定も「0」と見なされます。
このほか、特に未収入金や仮払金などの「その他流動資産」(売り上げや損益に直接影響しない債権勘定)が業容に比較して大きい場合は、「粉飾の可能性あり」として特に注意されることがあります。
経営者の方にも、銀行と同じような目線で自社の決算書を見てみることをお勧めします。今後の経営判断に役立つばかりか、場合によってはふに落ちない銀行の対応も理解できるかもしれません。
CRC 企業再建・承継コンサルタント協同組合
協力: 建通新聞社 http://www.kentsu.co.jp/
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