福岡市の天神近くにある不動産。西鉄大牟田線沿いだが、天神から少し離れているため価格はそれほど高くなかった。それでも、2年ほど前には坪単価600万円を超えていた時期もある。
この不動産を所有している企業が、転売を考えた。ところが、銀行が「うん」と言わない。今の価格は良くて200万円。競売などになると150万円が付けば御の字で、ある不動産関係者によると「競売なら120~30万円だろう」というところ。
所有者は、銀行への負担を減らすために1円でも高く売ろうと苦労を重ね、売却先を見つけてきた。購入価格の3分の1程度だが、坪220万円で買い手を見つけたのだ。
ところが、銀行の本店が「うん」と言わない。それどころか「競売でいい」というのである。坪単価が約100万円も下がるのにだ。
「早く処分すれば、また開発がスタートする。競売なら1年以上はこのままになる。不景気、不景気といっているが、開発のチャンスの芽を刈り取っているのが銀行なんだよ」と、関係者は嘆く。
坪220万円で売ると、銀行は損失が出る。すると、当たり前だが、何故220万円で売ったのかについて株主への説明責任が生じる。それが面倒だというのだ。坪当たり100万円下がっても、競売なら説明が要らないのだという。
銀行がこうした姿勢である限り、民間企業が浮上しようと頑張ってもよくなるものではない。チャンスを摘み取っている形の銀行が考え方を変えなければ、景気回復までの時間が掛かるばかりだ。
【山口】
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