昨年10月、博多港で水深15mのコンテナバースが供用を開始した。大型コンテナ船の寄港が始まり、既に整備されている世界水準の物流システムと併せて、博多港の高いポテンシャルが示された。一方で世界的には知名度が低く、釜山や上海など大型港との競合関係もある。こうした環境の中、博多港はこれからどのような役割を担っていくのか。その進むべき方向性をKBCラジオ番組パーソナリティなどとして活躍中の中村もとき氏の司会で、博多港ふ頭(株)代表取締役社長の江頭和彦氏、九州大学大学院経済学研究院教授の久野国夫氏、福岡ロジテム(株)顧問の賀来紀久男氏の3名に語り合っていただいた。
●総合力を活かした連携を
中村
今後の博多港に期待すること、ご提案をいただきたいのですが。
賀来
福岡県は農業県でもありますから、船で運ぶ農産品を選んで、輸出することを考えてみてはどうでしょうか? 現在、生鮮品は空で輸出されていますが、船の足に耐えうるような産品で、大量に出せるものを見つけ出せれば、農業政策にも大きなインパクトがあると思います。
久野
大学には中国からの留学生が大変多く来ています。彼らは日本で生活すると帰りたがらないんですよ。総合的に見た場合、日本の方が優れているという状況があります。アメリカも今回のサブプライムローン関係の落ち込みで回復には時間がかかりそうだという状況を考えると、やはり日本はこのあと、中国を向いていかなければいかないでしょう。大連や釜山と対抗するのではなく、玄関口として博多港、あるいは福岡空港も含めて日本の総合力を活かしてつきあうための道を模索することができたらと思います。具体的なメニューをこれから考えないといけませんね。
江頭
先ほど話した自動車部品などはそうしたことを考える際のテーマのひとつになりうるでしょうね。また、賀来さんが言われた農産物では、現在、中国から一方的に大量に輸入されている「片荷」の状態なんですが、この片荷の解消とまではいかなくても、ある程度はバランス化ができるアイデアだと思います。今回、アイランドシティに青果の3市場が合併して移転してきます。これがきっかけになるといいですね。
賀来
陸送の部分でも活性化につながることになると思います。柿や梨などは輸送時間が多少長くても十分耐えるし、加えて東アジアの人たちに人気の果物でもあります。こうした産品にチャレンジしたいですね。
中村
今はそうした動きも民間レベルなんですよね。
江頭
それでいいと思います。役所がそこまで踏み込むのではなく、商売は民間に任せてください。役所は検査体制や国家間で協定を交わすなどによって民間がスムーズにものの出し入れができるようにサービスレベルでサポートをしていただきたいのです。そうすれば民間ががんばりますよ。
中村
きょう、皆さんのお話をお伺いして、安心しました。博多港は西日本の玄関港として、現実的な夢を持てそうですね。
(おわり)