こども病院の人工島移転に次々と黄信号が点滅しはじめた。「既に計画は破綻している」(市内医療関係者)との声も上がり始めており、今後の市の動きに注目が集まる。
同病院移転問題や人工島事業について、「白紙に戻して見直す」と訴え当選した吉田宏市長だが、見直しと称して実施した「検証・検討」がはじめに人工島ありきの作業であったことはすでに明らかになっている。象徴的な事例が、昨年7月に報じたこども病院現地建て替え工事費の大幅水増しであろう。この問題をめぐっては工事費水増しの根拠となる文書を捨てたとして公文書毀棄の疑いで地検に告発状が出されている。吉田市長は被告発人の1人でもあるのだ。
収支計画、事実上の破綻
さらに、新病院の計画案そのものにもけちがつき始めた。市は、新病院のベッド数を230~260床に増床するとしていたが、県に申請した「260床」はあっさり拒否される可能性が強くなっている。県医療審議会が出した答えは233床が妥当とするもので、市の収支計画そのものに疑問を呈した形となった。ベッド数削減以上に問題なのは、「こんなに患者は来ない」と専門家に市の計画を否定されたことだろう。
移転事業は起債に頼ることになっているが、起債の許可を出した総務省に提出した経営計画も、県に提出したものと同様の内容である。県医療審議会が申請ベッド数を削減した大きな理由が、来院患者数の見通しに根拠が乏しいとしたことで、市側は経営の基礎となる収支計画そのものを見直す必要に迫られる。当然、総務省に提出した起債許可の申請内容についても、手直しもしくは説明をしなければならない。申請ベッド数の削減という答えは、市側の経営計画そのものを否定したといっても過言ではないのだ。
都市高延伸はいつ?
データマックスは、こども病院人工島移転反対の理由として、救急搬送時の時間的問題をあげてきた。特に早産の場合、「30分が人生を決める」とまで言われることを考えれば、人工島にこども病院を移転させるということは、幼い命の軽視でしかない。交通アクセスの悪さは致命傷なのだ。吉田市長は、「交通アクセス整備のため都市高速を延伸する」と言い切ったはずだが、その都市高延伸も作業が進んでいないことが明らかとなった。これまた肝心の福岡県にやる気が見えないのである。新病院ができても都市高速延伸が何年も後になるようなら、重大な問題が生じることは分かりきっている。市OBや県の関係者からは、「タイムログ」の問題を指摘する声は少なくない。こども病院のためだけという理由では、高速道路の延伸を認めるわけにはいかないという県や国の基本姿勢を知らなかった市長に、重いツケが回ってきたということだ。
新たな問題は!?
こども病院人工島移転は議会の承認も終わり、人工島内の土地も購入、PFI事業者選定に向けての作業に入っている。しかし、計画には次々と綻びが見えはじめた。このうえさらなる疑惑が持ち上がれば吉田市政はますます追い込まれることになるだろうが、表面化していない事実はまだまだ残されている。