弱者をかたる詐欺まがいの事件を引き起こしたベスト電器。企業としては最低の手口を使ったわけだが、コンプライアンスを論じるまえに、同社の反社会性ともいうべきさらなる問題が浮上した。
不正の提案は「大手広告代理店」
16日、障害者団体向けの「心身障害者用低料第3種郵便物制度」を悪用し、本来支払うべき郵便料金を免れたとして、東証1部上場の大手家電量販店「ベスト電器」(福岡市博多区)の元販売促進部長が大阪地検特捜部に郵便法違反容疑で逮捕された。これを受けてベスト電器は同日「当社社員の逮捕について」(以下、発表文)とするお詫びと事件に対する認識を公表した。それによると、事件を招いたことを株主や顧客にわびたうえで、問題のダイレクトメール(DM)は「大手広告代理店」から法的検討を経たものとして提案を受けたとしている。さらには、「郵便法に抵触するとは思い至らず、法令に違反しているとの認識すらなかった」と明言、自社に非はないとの見解を示した。不正の提案は「大手広告代理店」から受けたもので、法令違反はないというから採用したというのである。新聞報道などでは「博報堂」が不正をもちかけたことになっている。しかし昨日、ベスト電器の元部長とともに同容疑で逮捕されたのは、大手広告代理店・博報堂の子会社の役員である。ベスト電器の発表文には違和感を覚える。
「対外的問題を考えて」???
同日、データマックス取材班が、ベスト電器が発表した発表文のなかの「大手広告代理店」とはどこを指すのか、同社総務部に確認したところ、「大手広告代理店」については、どこを指すのか明言できないと回答を拒否された。同社によれば、直接の取引は今回の事件で執行役員が逮捕された「博報堂エルグ」とするが、発表文からは「大手広告代理店」とは「博報堂」本体であるとしか考えられない。再度、どちらを指すのか確認を求めると、発表内容にある「大手広告代理店」が「博報堂」かその子会社の「博報堂エルグ」であるかは答えられないという。その理由を聞いたところ「対外的問題を考えて」と、訳のわからない言葉が返ってきた。「ぼかした」「申し上げにくい」とも言う。とんでもない企業体質である。自社の発表文で責任転嫁した相手の社名をぼかして、分からないようにしたということなのだ。
謝罪の意を表した発表文で、ごまかしをするに及んでは救いようがない。ベスト電器は、今日17日に予定されている同社の決算発表の場で、不正をもちかけた「大手広告代理店」について「博報堂」本体なのか子会社の「博報堂エルグ」なのか聞かれたら、「答えることもある」という。これまた曖昧な姿勢だ。
正面から事件と向き合え
一般的に「大手広告代理店」とは、電通か博報堂を指すことが多い。もちろん資本金350億円を超える「博報堂」と、同3,000万円の「博報堂エルグ」を比較すれば、どちらが「大手広告代理店」であるか一目瞭然であろう。発表文の内容を「ぼかし」、その正確な情報を求められても「答えられない」とするベスト電器の回答からは、障害者団体を利用した事件の当事者としての反省の姿勢はまったく見えてこない。残念だが、福岡の恥というより他はない。ベスト電器が再生を図るつもりなら、真摯に事件と向き合うしかあるまいが・・・。
【頭山 隆】
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