激変してこそ企業寿命を延ばすシリーズ

泰平物産の竹原社長は不良債権には非常に神経をとがらしていた。だから不良債権防止のために地元の建設業者との取引を中断して大手ゼネコンにシフトを変えた。これが昭和６２年から平成元年にかけてだ。そして中堅ゼネコン・東海興業の倒産で焦げ付いた。「これではいけない」と販路の方向をスーパーゼネコンに切り替えた。だからこの５年は指摘するべき不良債権はない。建材商社の倒産の主要な原因は焦げ付き圧迫による資金ショートだ。だが今回は珍しく不良債権が倒産の原因でなく売上の急降下であった。

ポイント２
努力しても売上が減る。　あー悲しいかな、宿命だ!!

　前回、既往の業績の資料を添付した。2006年３月期58億9,400万円、07年期53億2,000万円、08年期53億5,500万円と下降線を辿り、09年期を決算すれば40億円に達するかという惨状のようだ。これでは資金繰りの手当てもできない。経営者も民事再生法を申請して再起をはかるようなプラス意欲も無くしてしまうのは自然の流れだ（同社は自己破産の申請を決断した）。絶好調の時は年商100億円を突破していたのである。それがついにピーク時の40％に長期低落を続けてきた。
　まず、同社の破産手続開始申立書から引用してみる。

＜破産手続開始の原因となる事実＞
１．申立人は、本申立書付属書類の債権者一覧表記載のとおり、負債総額1,937,866,459円（債権者数156件＜申立時点における見込件数＞）の債務を負っているが、その資産は、同付属書類の財産目録記載のとおりである。したがって、同非常貸借対照表記載のとおり、支払不能又は債務超過の状況にある（破産法16条）。
２．上記事実が生ずるに至った事情は次のとおりである。
　申立人は、昭和24年に前代表者が創立した株式会社（３月決算）であり、本年度で創業61年を迎えたところであった。申立人の主要事業は、生コンクリートや金属製建具を中心とした建築資材の卸売業及び木材の生産、加工、販売等で、取引先は大林組、竹中工務店、戸田建設など大手企業等であり、九州一円において事業を行い、業界内では中堅企業という位置づけであった。
　ところが、申立人は、平成19年度決算（59期決算）で5,700万円の経常損失、平成20年度決算（60期決算）で9,500万円の経常損失を計上し、平成21年度決算（61期決算）でも6,500万円の経常損失を出す結果となった。
　この間、平成19年12月31日（60期中）には、関連会社の泰平木材株式会社を解散し（平成20年3月31日清算結了）、事業を申立人に統合して人件費や事務所経費を削減し経営の合理化を図ったが、事業収支を黒字化するには至らなかった。
　平成21年１月中旬、平成20年度の売上が落ちていたことから、当座の運転資金として不況対策緊急融資制度を利用し、西日本シティ銀行に8,000万円の融資を申し込み、同年２月に同額の融資を受けた。
　ところが、融資を申し込んだ直後の平成21年１月29日、栄泉不動産株式会社（本社大阪市中央区高麗橋４丁目１番１号）が大阪地方裁判所へ民事再生手続開始を申し立てたため、申立人が建築資材を卸していた現場（福岡市東区千早のビル建築、栄泉不動産発注、大林組請負、申立人建築資材搬入）の作業がストップした。栄泉不動産の現場で、申立人は、約９億円余の売上収入を見込んでいたが、これにより6億円余の売上収入の目途が立たなくなった。
　平成21年２月、３月の業者への支払いはそれ以前の売上でまかなうことができたが、同年4月末の手形決済資金（約2億7,000万円）、同年５月末の手形決済資金（約２億4,000万円）の支払いについては栄泉不動産の現場収入をあてにしていたため、決済資金がショートすることとなった。同年６月までしのげば栄泉不動産の現場が動き出し資金が回転するようになるという期待があったので、取引先銀行に当座のつなぎ資金の融資を求めたが、融資を受けることはできなかった。
　このため平成21年４月30日の手形決済資金の調達が困難となり、やむなく破産申立てを決断するに至った。（引用以上）

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