アキラ水産株式会社 代表取締役・安部泰宏氏
「博多港は大消費地を兼ねた大生産地」
福博の街を訪れる人たちからは、「福岡の魚はうまい」という言葉をいただきます。高級店だけでなく、普通の居酒屋やレストランなど、どこにいっても魚料理がおいしいのを、不思議に思われるようです。博多港は、福岡市の中心部に極めて近いところに位置しています。博多港は西日本一の水揚げ量を誇る生産地であり、その周辺には、144万人を擁する大消費地が広がっているのです。獲れた魚は、その日のうちに食べることができるのですから、おいしくないはずがありません。博多港は豊かな漁場に恵まれており、玄界灘、対馬、長崎などの海域からはアジ、サバ、ブリ、タチ、メバル、タイなどあらゆる魚が水揚げされます。春は、品書の主役が、冬の定番である鍋物から別の料理に変わっていく時期であり、旬の魚もまた折にふれ変わっていきます。福博は、四季折々の魚を、ふんだんに食べられる街でもあるのです。
しかし、魚の消費量は年々減少しているのが実情です。ライフスタイルの変化に伴い、いわゆる町の魚屋さんは減ってきています。魚をまるごとさばくことのできる主婦は、ほとんどいなくなってしまったのではないでしょうか。今はなにごとにつけ、スピードが要求される時代です。肉や野菜と比べて料理に手間がかかってしまう魚は、食材として、敬遠される傾向にあるのかもしれません。しかし私は、「魚が嫌いだ」という人に出会ったことがありません。食べる分には、皆大好きなのです。そうしたおいしいものが食卓から遠ざけられてしまうのは、非常に残念です。
「市場の開放など、趣向を凝らして魚食の浸透を図る」
そのため、あらゆるかたちで魚食の普及に努めています。たとえば私は、福岡市鮮魚仲卸協同組合の理事長を務めていますが、昨年7月からは市場や各仲卸企業と協力して、毎月第2土曜日に「市民感謝デー」を設けています。鮮魚市場を一般に開放しているもので、地元の仲卸全35社をはじめ小売業者、飲食店など60近い店舗が出店。1回目の7月12日には1万1,000人の方に来ていただき、その後も毎回、高い評価を頂戴しています。11月8日の第5回目には、なんと2万2,000人もの来場者があり、身動きができないほどでした。毎回、各店舗では、「お魚さばき方実演」や「マグロの解体ショー」など、趣向を凝らした催しがさまざまに開かれています。また、2月14日を、バレンタインデーにちなんだ「バレンタイ(鯛)ンデー」に設定。「レンコ鯛の開き」や「鯛チョコ」が来場者にプレゼントされました。「お魚さん展示コーナー」では、季節ごとの魚や大衆魚を中心に展示台に並べ、その名前をパネルに掲示。日頃、一般の方が見かけることのない大型魚も、並べることにしました。
今後も料理教室や料理番組を手がけるなどして、なるべく多くの皆さんに魚を食べていただけるよう、努力していきます。
私たちは、博多港を玄関として商売をしてきました。こうした地道な活動を続けることによって、魚を食べる人が増えてくれれば、これほどうれしいことはありません。
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