福岡市と県の関係悪化を懸念する声が広がっている。
事の発端は空港をめぐる吉田宏福岡市長の対応だ。海上新設か現空港の増設かで注目された福岡空港の過密化対策は、今年3月、麻生知事の決断で増設案に落ち着いた。市長選挙では「新空港はいらないと明言する」と歯切れのよかった吉田市長だが、就任後は一転、空港問題について口を閉ざす。明らかな公約違反であるが、判断だけを麻生知事に委ねるという姑息な手法にも批判が集中した。 さらに、国に対する意見書には知事とともに署名しておきながら、増設案公表の記者会見では将来への調査継続や北九州空港の延伸について不満をあらわにする。この態度に怒った知事によって、会見から退席させられるという前代未聞の醜態を演じてしまい、知事と福岡市長の不仲が顕在化する。
問題は、単に首長同士の不協和音で片付けられる状況ではないということである。福岡市が強引に進めるこども病院の人工島移転については、ベッドの増床、都市高速延伸という重大な問題を抱えている。実現できなければ福岡市の移転計画は大きな齟齬をきたす。
しかし、ふたつの問題についての決定権は福岡県が握っているのである。
さらに新型インフルエンザで注目される「感染症センター」についても、県の意向が注目される。福岡市は現在の「市立こども病院・感染症センター」のうち「感染症センター」を廃止し、こども病院だけを人工島に移転させることを決めているが、感染症センターの指定は県が行なう。市側は県と九大に後をお願いするとしているが、これは根回しなしの勝手な言い分。県の判断次第ではどうなるか分からない。
空港問題で子どもじみた対応に終始した吉田市長に対し、麻生知事の怒りはおさまっていないという。県議会内部でも話題になるほどだ。事実、ある県議会関係者は「こども病院のベッド数、高速、感染症センター。新3点セットだ。吉田さんが頭を下げなければ先に進まない問題ばかり。空港問題に対する吉田さんの態度によって、知事が面子をつぶされただけでなく、県や県議会も敵に回したということ。これからどうなるか分からない」と予言する。
市役所周辺からも「吉田さんはこれからどうするんだろう。財界や連合福岡とも関係良好な知事が『吉田さんには協力できない』といえば、終わりだろう」とする声が聞こえてくる。「一番頭を抱えているのは(市役所の)職員ですよ。政治感覚ゼロの市長を支えるのは楽ではないですね」そう話す市役所職員の顔から笑いが消えていた。
【市政取材班】
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