同社の経営は現在、厳しいの一言である。前期は設立以来となる営業利益段階から赤字に陥っている。それでも赤字回避のため、100%子会社のネット通販部門のイーベストを売却してしまうという愚策で利益獲得に動いている。「ベスト」の社名を冠した子会社を売却するとは、それほど同社の凋落を象徴しているといえる。
売却されたイーベストは、ベスト電器とソフトバンクが出資して1999年10月に設立されたネット通販会社(その後100%子会社、08年2月期の売上高56億48百万円)。同社は家電のネット通販分野では老舗であったが、親会社のベスト電器に育成・強化ノウハウが殆どなく、現在では後発の同業者や異業種からの参入組に圧倒され、累積赤字を抱えていた。
売却先はネット通販事業のストリーム(ベスト電器も出資)である。同社は家電製品のネット通販事業を行っているが、ベスト電器と05年8月資本事業提携するまでは、決まった仕入先もなく、仕入値も高かったとされる。そのためストリームは顧客に対して安定供給するためにも仕入先を探す必要に迫られ、ベスト電器との資本業務提携に至った。同社はその後成長を遂げ、09年1月期は291億36百万円を売り上げる上場企業となっている。一方、ベスト電器が設立したイーベストはジリ貧状態が続く。経営幹部に今後のネット通販事業が、営業戦略上いかに大切かの認識のカケラもない結果としか考えられない。
ベスト電器はFC展開しており、そうした相手先への商品供給は手馴れたものであった。そのため自社経営による存続よりも、安易にストリームへの売却に動いたものと思われる。
(つづく)
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