慢性的な医師不足、看護師不足に悩む高齢化国家の日本。特に財政難などで存続すら危うい地方の公立病院運営は、負のスパイラルに陥っているようだ。
団塊世代が定年を迎え熟練看護師が大量に現場を去っている。しかし、定年は60歳、通常の年金支給は65歳からという制度上、再雇用を希望する看護師は多い。ところが、この看護師不足の最中、再雇用を希望しても採用されないケースが多いという、なんとも奇妙な現象が起こっている。
ある県の公立病院関係者の話では、国の施策にも問題があるが、それ以上に地方自治体の財政的な問題が大きいという。年功序列で給与が上がっていった定年退職者より、若くて給与も低い新米看護師を優先して採用し、運営経費の節減を図っているというのだ。
経験が浅い人材ばかりを集めたうえに、少人数体制というのでは、現場の疲弊は深刻なものとなる。必然的に、疲れきって職場を去る者が後を絶たないという悪循環に陥る。
介護も含め、ますます医療・福祉に従事する人材が必要とされている現在、国がなすべきことは、定額給付金のようなばら撒き政策ではなく、医療・福祉関連の予算を大幅に増やし、現場の人材を育てることなのだ。現在審議中の09年度補正予算や、各政党のマニフェストにそうした医療・介護の根本的問題を見据えた施策が盛り込まれているのか、じっくりと検討する必要がありそうだ。