必要なところにカネが来ず
2009年2月、『地方を殺すのは誰かー立ち上がれ、圧制に苦しむ地方の経営者よ!』を著した岩崎産業代表の岩崎芳太郎氏。強烈な本のタイトルの裏側には、中央に対する批判のみならず、声を上げない地方経営者に対する檄の意味も込められているようだ。そんな岩崎氏の想いを存分に語っていただいた。
所在地:鹿児島市山下町9-5
創 業:1923年5月
設 立:1940年4月
資本金:39億円(グループ全体)
年 商:(08年度)約530億円 (グループ全体)
―その象徴が小泉・竹中構造改革というわけですね。
岩崎 そうです。アメリカ、もしくは金融関係者が、いろいろなことを分析・研究して自分たちが競争優位になる、もしくは経済を牛耳るためにはどうしたら良いかというのを積み上げてきた。その結果が現在のグローバルスタンダードとレッセフェール(自由放任主義)です。幸い、「おごれるもの久しからず」のことわざどおり自滅し、世界中が彼らの思惑通りの完全支配をされずに済みました。
こうしたことは1980年代後半から研究・検討され、90年代からすべて仕組まれた話です。
―金融崩壊はなぜ繰り返されるのでしょうか。
岩崎 それこそが人間の弱さであり、金融資本主義の怖さです。そうしたことを人間の知恵で何とかするために経済学があります。ところがこれが曲者で、経済学はどうしたら経済が良くなるかというためのテクノロジーであり、テクニックの学問ですから、本来理想とする姿がそれぞれの立場で違います。また、その立場は、現実社会をどう見るかによってマチマチでもあります。実現目標とされる理想がイデオロギーによって左右されるわけですから。
社会主義、共産主義という概念はマルクスがつくりましたが、残りの部分が資本主義というわけではありません。誰かが定義したのではなく、だからこそケインズやフリードマンがいたわけです。さまざまな経済体制があったときに、こういう状態が人間にとって最も良いという前提条件が違えば、資本主義のなかでもまったく違ってくるわけです。
―資本主義の定義が意図的にすり変えられた感があります。
岩崎 ソ連崩壊で資本主義の勝利というプロパガンダがあった。そこで社会主義に勝った資本主義の本質を上手にすり替えられた。それがマネタリスト、レッセフェール、思想的に言うと右派リバタリアン(自由意志論者)というような話です。29年の世界恐慌のときもレッセフェールでした。
新自由主義とか市場原理主義とかきれいごとを言っても、結局はカネを持っているものが一番強い。資本がカネというならば、そのカネが無人格に匿名性を持って集まれば自己増殖する。そこには社会的にこうした投資が良いという価値観はなく、とにかく儲かるところにカネを動かせということになる。そうすると、我々のような地方のバス会社にはいっさいカネが来ず、最終的には倒産してしまって地方の足が無くなります。
しかも、そうしたカネが東京の不動産やパチンコには入るけれども、地方の足となるバス会社には入らない。今日本で起こっていることはこういうことです。
~つづく~
【大根田康介】
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