100年に一度の経済危機と言われながらも順調に売上げを伸ばす低価格ファッション企業。グローバルな商品調達や販売網をもつ外国企業が日本に進出する一方、ユニクロ、しまむらといった国内勢も日本人の嗜好に合わせた戦略で対抗する。
新規参入企業も続々登場し、市場は激戦の様相へ。各社の戦略から低価格ファッションの強さと脆さを検証する。
1.台頭するファストファッション企業
低価格ファッションは、マクドナルドのような外食にたとえて「ファストファッション」と呼ばれ、欧米のような階級社会では一定の市場規模を確立している。
特に黒人やヒスパニックといった低所得者を抱える米国では、メーカーや小売業がこうした層を対象に商品や業態を開発し、市場を開拓してきた。代表的なものではギャップの低価格ライン、オールドネイビーがある。
ただ、日本のように消費者が収入に関係なくファッションに投資する国では、ファストファッションの市場は見えづらかった。アパレルメーカーはファッションをブランドで仕掛けることで、高価格を維持できたからだ。
ところが、平成不況によるデフレの長期化で、消費者は安価なファッションに対する抵抗感が喪失。さらにザラなどのグローバル企業が進出し、国内勢のユニクロやしまむらも商品開発や店舗拡大で対抗。今年に入り一段の景気悪化も影響して、ファストファッションは日本のファッション市場で急激にシェアを拡大している。
こうしたファストファッション企業のほとんどは、SPA(製造小売業)のシステムを構築し、商品企画から店舗販売までを一貫して自社で行う。企画生産や販売のリスクを自
社で負う分、コストダウンが図れ、低価格を実現しながら利益も確保できるのである。
福岡の地元メーカーも参入を狙う
さる3月22日、福岡国際センターで開催された福岡アジアコレクション。ステージではテレビでおなじみのタレントが、地元メーカーとの協業ブランドを纏い、華やかなショーを繰り広げた。
実はこのイベント、05年から開催されている東京ガールズコレクション(TGC)を下敷きにしたもの。そこで脚光を浴びているのがSPAによるファストファッションである。
TGCの主催は通販サイトの運営企業で、観客は携帯ショッピングに何の抵抗もない若い女性。SPA側もファッションビルに直営店を構えるが、TGCでブランド力をあげながら、通販対応で全国に顧客を拡大する狙いがある。
TGCは毎回、動員記録を塗り替え、一定の販促効果を出している。これはファッションの産業構造が、アパレルメーカー&卸+小売り(店舗販売)一辺倒から、SPA+通販(無店舗販売)に変化していることをさす。
一方、福岡ではアパレルメーカーも小売業も高級品を中心に販売してきたが、福岡アジアコレクションの開催は、ファストファッションへの参入を予感させる。現に出展した地元メーカーや販売を支援する小売業は、観客の反応に手応えを感じ、売上げ拡大を視野に入れているようだ。
ただ、福岡の場合、メーカーと小売りの立場は変わらない。SPAではないから、メーカーは直営店を持たず、小売業は企画生産機能がない。現状ではブランドの価値をあげ、売上げに結びつけていけるかは未知数だ。
日本でもアジア生産のファストファッションが台頭
【剱 英雄】
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