看板降ろすベスト電器
07年9月、ベスト電器はヤマダ電機の買占めに対抗してビックカメラに支援を求めた。当のビックカメラにしても1999年4月にベスト電器のお膝元に進出、福岡一、人が集まる西鉄天神駅の店舗で圧倒的な集客力により、ベスト電器の天神本店に多大なる影響をもたらした。ビックカメラはその余勢を買い、03年3月には天神2号店を天神西通り近くにオープンさせている。ベスト電器にとって牙城福岡に中央勢が乗り込み、一番衝撃を受けたのはビックカメラであったと思われる。ヤマダ電機には翻弄させられ、ベスト電器は特色も出せず、大型店舗建設で対抗したことにその後の問題も生じた。
ベスト電器もダイエーと同じく、安売りが原点である。だんだん規模が大きくなるにつれ、値段もサービスもそこそこになってしまう。強い商品もなくなれば客足も遠のく。特に新し物好きな福岡の県民性もあり、今流の商品構成と価格的な魅力を強く打ち出す中央勢には若者が集中、ベスト電器から足が離れていった。一度離れた客はなかなか戻ってこないのが、この世界である。
ベスト電器は巻き返しをはかるため、06年11月に東京の家電量販店「さくらや」を買収した。しかしながら、さくらやは再建途上の会社であり、逆にベスト電器の足を引っ張る存在でしかなかった。弱り目に祟り目であり、裏目裏目に展開している。
08年8月、ベスト電器は資本業務提携しているビックカメラに対して、自社株割当てなどにより同社の持株比率は15.03%となった。ベスト電器は同社の持分法による関連会社になり、傘下入りした。
また09年3月には、両社の合弁でB&B社を設立している。同社はビックカメラのFC店であり、ベスト電器の店舗に対してはフランチャイザーになる。ベスト電器は、同社の大型店をB&BのFC店に順次変更して、ビックカメラの店舗にすると発表している。ベスト電器の大型店舗はFC店になるというのである。これではベスト電器が家電量販店業界に対して白旗上げたのと同じである。
上場企業ともなると3ヵ年計画を公表して、計画に基づき経営されている。しかし、ベスト電器はこうした事業計画を一切公表していない。ここ5年間、ベスト電器を見続けているが、その場凌ぎで経営しているようにしか見えない。買収などは極秘事項であろうが、それなりの計画があってしかるべきである。そのために経営企画室なども設けていると思われるが。行き当たりばったり経営を象徴する事業は、既存店舗の空スぺースを利用したコンビニエンス店舗展開であろう。しかし、コンビニエンスが必要とする店舗と郊外型の同社の店舗とのニーズはかなり異なる。別途開発するのならともかく、最初から破綻した事業になったようだ(当初計画の店舗設置数のようにはいかなかった)。
(つづく)
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