「天下り」、「無駄な公共事業」、「赤字国債」、どれも国民の厳しい批判を受けてきたものばかりであり、この国の形を歪めてしまった元凶でもある。擁護・推進してきたのは他ならぬ自由民主党だ。だからこそ、政権交代が望まれているのだし、民主党は「生活が第一」を掲げて最終決戦に臨もうとしていた。「自民党らしさ」が最大限に発揮された15兆円にのぼろうかという史上最大規模のバラマキ補正予算案は、国会論戦を通じて徹底的に問題点を明らかにし、安易に通過させてはならないものだった。しかし、民主党のドタバタ劇に視線があつまる中、13日、すんなりと衆院で可決されてしまった。後世に残る愚行である。いつの日か必ず、「なぜ止めさせなかったのか!」と後悔することになるだろう。その最大の責任は、肝心なところでぐらついた民主党以上に、検察と大手マスコミにある。
西松建設による違法献金事件では、小沢民主党代表の秘書が逮捕・起訴された。しかし、逮捕容疑である政治資金規正法の虚偽記載については、無罪になる可能性が残っている。
小沢氏側に対し政治資金を提供した「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」は西松建設のダミーだったことが明らかになっているが、政治団体としての要件を満たしていなかったわけではない。両団体から小沢氏側への金の異動は、政治団体から政治団体への適正な形での献金に過ぎず、この段階での違法性は問えないことになる。問題は両団体の原資が西松建設の金だと知っていたのかどうか、知っていたらそれが「虚偽」になるのかどうかである。しかし、外形的には、西松建設からふたつの政治団体へ入った時点で、金は西松建設のものではなくなる。小沢氏側は「新政治問題研究会」と「未来産業研究会」から政治資金の提供を受けたとして収支報告に明記しており、なにも「嘘」をついていない。政治資金規正法上の問題があるとすれば、同法で禁じられた政党や政党の政治資金団体以外への企業献金をおこなった形となる西松建設からふたつの政治団体への入金についてである。政治団体から政治団体への寄附が違法ではない以上、小沢氏側を罪に問うことは難しい。小沢氏の秘書が無罪にでもなったら、その責任は誰が取るのだろう。
西松建設事件は、総選挙を前にして政権奪取を視野に入れていた野党第一党の党首を政治的に抹殺してしまった。検察がどう言い訳しようと現実はそうなったのである。そして、検察の国策捜査に追随したのが大手マスコミであることは、今日までの報道を振り返れば明らかだろう。事件が進展しないと見るや全てを「小沢辞任」に集約し、辞めれば「院政」批判を始めた。「親小沢」「反小沢」と面白おかしくはやしたて、補正予算の是非など二の次、三の次。これが今の大手マスコミの実態だ。国民の知る権利に応え、真実を報じるとしながら、間違った方向へ国を動かしていると言っても過言ではない。調子に乗るなと言いたい。
バラマキ補正の正体は、近い将来に多くの箱モノが立ち、大して必要のない高速道路が建設され、天下り先への手厚い公金投入、消費増税などが明らかになった頃に見えてくるのかもしれない。ただし、その時になって責任を取れる人間などいないのだ。西松建設事件で小沢氏の秘書が逮捕されたとき、国策捜査への疑念と、この捜査が日本の政治史を変える可能性に言及した。訂正しておきたい。「西松建設事件の最大の問題は、この事件を扱った検察と大手マスコミが日本をおかしくしたことである」
【頭山】
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