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特別取材

「子育て支援」とは何か?~待機児童はなぜ、増える?(4)
特別取材
2009年5月15日 08:00

 「まさか、きょうだい別々の園に通うとは思ってもみませんでした」
 福岡市東区の会社員・今林智子さん(37・仮名)。夫婦共働きで、義理の両親が近くに住む。第1子は私立幼稚園に、第2子は私立認可保育園に通う。
 「(2人目の)育児休業中は、所定の手続きを取って、それまでどおり上の子は認可保育園で預かっていただきました。ところが、いざ復職を前に、下の子は同じ園に入れないことがわかりまして。園長先生は、『申し訳ない』って何度も頭を下げてくれました」と振り返る。
 
 自宅や職場近くだけでなく、通勤沿線上にある認可保育園にもアプローチした。しかし、2人のきょうだいを同時に受け入れてくれる園を見つけることはできなかったという。「下の子を預かってもらえる園を優先的に探しました。上の子は3才になっていましたから、幼稚園という選択も頭にありました」
 
 結局、第1子は保育園を退所、「預かり保育」のある自宅近くの幼稚園へ。送迎を引き受けてくれた義親の負担を少しでも減らすためだ。1才の第2子は、今林さんが通勤電車を途中下車して送迎する。なお、「預かり保育」とは、福岡市の私立幼稚園の多くが実施している有料の保育事業で、通常の保育が終了した後、そのまま夕方まで幼稚園で保育を行うもので、概ね午後5時前後、遅いところでは午後7時まで預かってくれる。
 幼稚園と保育園の園行事の日程が重なることもある。制服やかばん、教材な
どもそれぞれに規定のものがあり、「兼用」あるいは「お下がり」ともいかない。
時間的、経済的、ましてや肉体的、精神的にも負担は重くのしかかる。
 「別々の認可保育園に預ける方法もあったと思います。しかし、自分が電車を2度途中下車して送迎するのは、現実的には不可能。また、2人とも認可外保育園に入園させることも考えましたが、保育内容は良くても小規模園が多く、小学校生活に向けて十分な社会性が育つだろうか、という不安もありました」と心境を吐露する。

 このケースは、「特別」でも「稀」でもない。きょうだい児が同じ認可保育園に入れず、保護者が「はしご送迎」する姿は珍しくない。あるいは、諸々の負担を減らすため、きょうだい児全員を受け入れてもらえる他施設に転園させる保護者もいる。

 今林さんは、「どの園も精一杯の対応はしてくれた」と、関わった園の名は明かさなかったが、同じようなケースの場合、どのような対応をするのか、いくつかの認可保育園で聞いてみた。
 「できるだけ、きょうだい児は同時に受け入れたいとは思っています」「お母さんたちの不安を取り除く意味でも、特に育児休業明けのサポートはしていきたいと考えています」としながらも、歯切れは悪い。「せっかく築いてきた保護者と園の信頼関係をこのような形で失うのは残念」「転園したお子さんの負担を考えると、他に方法はなかったのかと思う」と話す園長もいた。
 一方、福岡市保育課は「待機児童解消のため、各園とも日常的に定数いっぱいまで子どもさんを預かっています。きょうだい児の受け入れはできるだけスムーズに行いたいのですが、待機児童の多さから、十分に対応し切れていないのが現状です」と苦渋の色をにじませる。
 東区は、福岡市の中でも待機児童が最も多い地域の1つ。来年度、新設園の開園も予定されている。待機児童対策のジレンマが少しでも解消されることを祈るばかりである。

【山本 かほり】

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