ベスト電器、過去日本一から現在7位
ベスト電器が業界売上高日本一になったのはバブル期であった。1997年になるとコジマが天下を取り、2002年からヤマダ電機が上州戦争・福岡の巻を制して一気に北上、日本一の座に君臨し続けている。ヤマダ電機の勝利は、店舗面積が1973年施行された大規模小売店舗法により規制されていたが、2000年6月規制解除となる大店立地法が施行され、郊外型の大型店舗戦略に打って出たことによる。その強さはスクラップ&ビルドを行いながら収益力を上げており、しばらく日本一の座は揺ぎないものである。
業界も上位7社の過去3年間の売上高が、3兆8,625億円から4兆9,015億円(前年度)と1兆円以上増加している。この間、市場規模が大きく拡大しているわけでもなく、寡占化が進んでいる。
業界地図は、これまで買収や合併・統合などにより、年と共に塗り変えられてきた。
第1位のヤマダ電機は独自展開していた。しかし、最近では買収を続け、マキヤ・ダイナマイト・ぷれっそ・キムラヤ・九十九電機等を傘下もしくは吸収してきた。そのため、有利子負債も増加している。
第2位のエディオングループは、ヤマダ電機に対抗する形で広島のデオデオ(第一産業)・名古屋のエイデンにより統合会社が設立され、ニノミヤ・ミドリ電化・100満ボルトのサンキュー・石丸電気・三石電化センターなどをグループ化している。
09年3月期予想は売上高が08年3月期と比べ6.0%減少して8,000億円にとどまり、営業利益も30億円の赤字、当期純利益も140億円赤字と、統合会社設立来初となる赤字決算となる。
第3位のヨドバシカメラは純血主義を貫いている。超都心型の中大型店舗で、地方は超大型店舗での展開。首都圏を中心に20店舗展開しているが、西日本地区では大阪と福岡、旧近鉄百貨店跡地に建設中の京都の3店舗にとどまる。東日本地区でも札幌などの4店舗である。まだ未進出地方都市が数多くあり、今後の展開次第では第2位まで上がる可能性がある。
第4位のビックカメラは、ヨドバシカメラと同じ都心型で売上高を伸ばしてきた。独自展開しており、1,000億円企業のソフマップを子会社にしたくらいで、大きな動きはなかったが、07年1月エディオングループとの統合計画を発表したものの、3月には白紙撤回している。07年9月ベスト電器に資本参加して08年10月持分法適用会社にしてベスト電器を傘下に収めた。同社の特色は取扱商品の豊富さである。そのため店舗ニーズに応じて商品構成する強さを有している。
同社はエディオングループに参加表明した後に白紙撤回したが、ベスト電器はヤマダ電機からの株買占めの動きを察知したと思われ、その頃からビックカメラに資本参加の打診をしていたと思われる。故北田光男ベスト電器超ワンマン会長は、自社にディーリングルームを構え、自社株の手口を証券会社に調べ尽くさせていたことは有名な話である。
ベスト電器を傘下に収め売上高は第2位になるが、両社とも売上高は前期より落ちることから、1兆円の大台に乗せるには仕入を一本化するなど構造的な改革が必要であろう。
統合するには、ベスト電器経営陣の刷新とベスト電器の膿を全部出させることが前提であるが、統合すればベスト電器の販路により売上高は大きく伸びると思われる。
09年8月期の売上高は前期より7.7%減の5,820億円を予想している。
第5位のケーズホールディングスは、買収・資本提携・FCと何でもありでグループを形成している。デジックスケーズ・ギガス・八千代ムセン電機・ユーアイ電器・土橋電気・デンコードー・吉田商事等を買収もしくは提携してきた。1,000億円企業のデンコードーを子会社にしたことは同社にとって大きかった。
第6位のコジマはこれまで大きな買収はせず、「安値日本一」のキャッチフレーズで店舗展開。ヤマダ電機と正面から戦い疲弊している。09年3月期予想は、売上高が9.1%減の4,598億40百万円にとどまる。営業利益も恒常的に赤字で、販促協賛金が営業外利益に計上され経常利益段階では黒字を続けていたが、今期は(経常利益は)51億30百万円の赤字へ。純利益は126億89百万円の赤字を予想している。
過去日本一の同社も、ベスト電器に次ぐ台風の目となろう。
第7位に過去日本一の売上高を誇ったベスト電器。同社は海外進出が早く、1985年にヤオハン(破綻)と提携してヤオハンのシンガポール店に出店、現在は東南アジアに36店舗出店している。同社は安さを武器に、街中の電気店スタイルで売上高を伸ばす一方、FC展開して卸販売でも多くの売上高を計上していた。しかし、ヤマダ電機の九州進出の本格化により、FC店も含め大打撃を受けた。大店立地法に乗り遅れ、ヤマダ電機対策に翻弄され、構造改革も遅れた結果、ビックカメラの傘下になっている。
06年9月に東京のオリンピック・家電満載館を継承したが大赤字で失敗。同年12月、さくらやを子会社化したが、予想外の大赤字で本体業績の足を引っ張る。07年9月にビックカメラと資本業務提携、08年10月にはビックカメラの持分法適用関連会社になった。全国の526店舗を活かす力は同社には既にないのだろうか。
(つづく)
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