4.変革が必要な日本市場
ファストファッションが定着し、デフレの波も収まりそうにない中、企業はどんな戦略を描けばいいのか。例えば、家電業界では各機器の価値に対する適正価格が決まっていて、キャノンのようにそれを提供できた企業のみが生き残っている。
その点、ファッション業界でもユニクロやしまむらが価値に対する適正価格を打ち出し、消費者の心を捉えている。言い換えれば、単に値段が安い商品というより、コストパフォーマンスの高い商品が消費者に支持されるということである。
また、ある程度の流行やデザイン性を押さえながら、スピーディーに商品を投入できるシステムをもつことも求められる。ただ、これには日本人の嗜好を捉えることが大前提なので、事前の準備にかなりの時間をかける必要がある。
ユニクロやしまむらは、海外SPAが上陸する以前から価値に対する適正価格を研究し、実践してきた。企業としていわゆる「変革/チェンジ」を行なったということだ。
しかし、百貨店は品揃えや価格決定権、商品の最終処分リスクをメーカーが負う消化仕入れが70%にも及ぶ。商品政策に関与しないのだから、売り切る力が育つわけがない。
また、量販店も消費者の嗜好をつかもうとせず、店舗数の割に商品開発を怠ってきた。これでは消費者が量販店でファッションを買おうという気にはなれない。両者とも変革は待ったなしということだ。
◎価格戦略に進むか地方百貨店
衣料品改革に対する取り組みでは、イオンが動き出している。低迷が続くジャスコでは、「イオンスタイルストア」を展開。消費者のライフサイクルに合わせた着こなし提案を強化し、性別、年齢別で構成した買いやすい売場づくりで勝負をかけている。
九州では若松店、鹿児島店など3店舗に開設。昨年12月に開業したジャスコ筑紫野店では、専門店街にないメンズやミセス、フォーマルのコーナーが消費者に受け、対予算比2ケタ増と好調に推移。イオンにとっては衣料品改革に光明がさし始めたと言えそうだ。
対する百貨店はドラスティックな改革は依然進んでいない。集客力を背景に有名ブランドや高級品を販売してきたがゆえ、ファストファッションにはなじみにくい業態だからだ。
しかし、百年に一度の経済危機、景気悪化は、そのDNAさえ変えざるを得ない状況に追い込んでいる。とにかく消費者は価格にすごく敏感になっている。さらに地方百貨店になると、SCやロードサイド専門店との競合もあり、価格軸は生き残りの絶対条件だ。
福岡アジアコレクションに登場した地場メーカーのブランドは、博多大丸がオフィシャルショップを設け、販売を支援。タレントと協業したブランドに手応えをつかみ、東館1
階で商品紹介も行なっている。
大手メーカー系のブランドが不振なのは、博多大丸とて同じ。値頃で人気に火がついたファストファッションは、喉から手が出るほど欲しいはずである。
【剱 英雄】
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