相談者 59歳 男性
調査を依頼してから数週間が経った頃です。探偵社の担当者から電話連絡を受けました。母の所在が分かったということでした。私は聞きたいことが山ほどありましたが、逸る気持ちを抑えて、探偵社の方の報告を聞きました。
私の実の母は元気でいるそうです。現在は、長崎県の市内に息子夫婦と住んでおり、再婚相手の夫とは死別していました。ゲートボールを毎朝近くの公園で楽しんでおり、午後はよく散歩に出掛けるとのことでした。
後日、母の顔写真を見せてもらうと、そこには笑顔の可愛いおばあちゃんが写っていました。
私は15歳のときに実母がいることを聞いてからずっと、忘れよう、忘れなければ、と思って考えないようにしてきました。恨み辛み、孤独や惨めさに押しつぶされたくなくて、忘れることに必死だったのです。
自分が子をもち、親となり、実母を恨む気持ちより、子供を手離さなければならない苦しみ、悲しみを考えるようになりました。父親である私でさえ、想像するだけで耐えられないと思うのに、お腹を痛めて産んだ母親の気持ちは一体どれほどのものだったのか。
母の写真を見てから、より一層母に会ってみたいという気持ちが強くなりました。
しかし、母には今の家族との生活、人生があります。
私のことを同居している息子さんに話しているかどうかも分かりませんし、話していなかったとしたら、いきなり私が現れたら息子さん達は動揺するでしょう。
せっかく元気に幸せに暮らしている母の生活を壊すことは…出来ません。
また、生き別れた私のことを忘れ去っているとは思えませんが、高齢なのでそれもあり得るかもしれません。
私と妻は探偵社の方に相談しました。何とか、母だけとコンタクトを取って自分の気持ちを伝えてもらえないかと…。
会いたい…。
探偵社の方は、私たちの気持ちを汲んで、依頼を引き受けてくださいました。
晴れた気持ちの良い午後だったそうです。
探偵社の方は、母が一人で家にいるのを見計らって訪ねてくれました。そしてゆっくり、丁寧に、ここに来た理由と私の気持ちを伝えてくれたそうです。
母は驚きながらも、とても喜んで「ありがとう。ありがとう」と何度もお礼を言い、「私も息子のことは一度も忘れたことはありません。でも、私から会いに行くことは出来なかった」「こんな天気が良くて気持ちの良い日に、こんな嬉しいことがあるなんて夢みたい…」と涙ぐんでいたそうです。
その母と近々会うことになりました。約60年ぶりに…
私は何から話すのでしょうか。何から尋ねるのでしょうか。自分でもまだ分かりませんが、今まで抱いた色んな想い、母への想いを伝えてみようと思います。
(了)
総合探偵社F.R.C. 鈴木教夫
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