激変してこそ企業寿命を延ばすシリーズ
前回のシリーズ(3)泰平物産の債務超過額は6億円に達する」と予測した。しかし、さらに徹底した調査の結果、その債務超過額が8億3,800万円に及んでいたことが判明したことを付加する。ここまで金額が膨張していたのであればよーく理解できる。自己破産申請の申立てに「栄泉不動産の民事再生法によって、あてにしていた東区千早のビル建築売上げ9億円の収入の目処が立たず資金繰りの方策がなくなった」と記載されていたが、本当に火の車の繰り回しの状況であったのだ。ところで、異様な事態に気づいた。同社が誇るスーパーゼネコン先への売上実績が、さほどでもなかったのだ。
<ポイント4 大手先がない不可解>
竹原社長は「焦げ付きが建材商社にとって命取りになる可能性がある。これをどうしも避けねばならない」という危機感を抱いていた。そこで昭和60年代から平成の初頭にかけて、受注を全国規模のゼネコンに切り替えていった。そして、東海興業など中規模のゼネコンが倒産して以降はスーパーゼネコンへ販路を絞ってきた――これまでは、同社に対する既成認識をこのように抱いてきたのだが、不可解なことを発見した(もちろん、今回の倒産の主要因は売上不足、利益なしの累積赤字圧迫によるものである)。
昨年2008年3月期の資料を熟読していただきたい。売掛金、受取手形、割引手形の明細一覧を添付した(この傾向は、倒産した09年3月期とさほど変化はないとみられる)。
まず【資料1】売掛金から点検していこう。総額3億6,556万9,000円ある。トップは麻生商事の8,692万6,000円だ。スーパーゼネコンは竹中工務店6,717万1,000円を筆頭に清水建設、大成建設、大林組、戸田建設が名前を連ねている。5社で累計1億3,000万円前後である。全体に占める比率は40%にも満たない。口数では生コン業者(関連の商社)との取引が多い。『泰平物産からは、スーパーゼネコンが得意先の大半と強調して聞かされていたのにさほどのものではない』という違和感を覚えた。
さらに【資料2】受取手形、【資料3】割引手形の一覧を見ていくと、疑念が高まってくる。【資料2】の受取手形の項目にスーパーゼネコン、中堅ゼネコンの銘柄が皆無なのだ。受取手形総額1億6,007万4,000円のなかにゼロなのである。JR西日本の関連会社である広成建設の手形が散見されるだけだ。設備業の大手・ダイダンの4,566万1,000円が目立つ。大半は生コン業者及び関連商社だ。ここでも麻生商事が上位を占めている。
<割引手形にもスーパーゼネコンがない>
通常、「スーパーゼネコンの受手の残がないのは、泰平物産も資金繰りに切羽詰まっていたから割引に回しているのだろう」と誰でもが判断する。割引手形一覧をみて愕然とする。割引手形合計5億ある【資料3】。割引手形は63枚あるのだが、一覧すれば一目瞭然。ない!! 全くゼロ!! スーパーゼネコンの割引手形が見あたらない。おかしな話だ。ここでも麻生商事の比重が高い(この点に関して後で触れる)。
(つづく)
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