「夢」の道州制
2009年2月、『地方を殺すのは誰かー立ち上がれ、圧制に苦しむ地方の経営者よ!』を著した岩崎産業代表の岩崎芳太郎氏。強烈な本のタイトルの裏側には、中央に対する批判のみならず、声を上げない地方経営者に対する檄の意味も込められているようだ。そんな岩崎氏の想いを存分に語っていただいた。
所在地:鹿児島市山下町9-5
創 業:1923年5月
設 立:1940年4月
資本金:39億円(グループ全体)
年 商:(08年度)約530億円 (グループ全体)
―大きな権力が一企業、一個人を計画的に潰している節が見られるときが多々あります。
岩崎 そうです。この国は怖いですよ。だから皆がおとなしくしているのでしょうね。ただ、己の安全保障は己で考えないとダメです。私のとっている方法が正解かどうかは結果で分かるでしょう。
結果責任をとらなければならない経営者たちが、無思考的にパターン化された経営手法を、原点、自分の価値観から考え直さなければなりません。地方の民間人たちが発想を変えないと、この国はダメになります。
また、政治家は基本的には地方の民間人なのです。それを日本人がよく分かってないからダメ。だから、我々がその自覚をきちんと持つことで、地方の政治力をとりかえすことが、中央・地方の官と対抗できる唯一の手段です。
それが今は逆で、地方の民が中央の民(大企業、経団連、マスコミなど)に躍らされて、自分たちが力をつけて唯一対抗し得る政治家たちの足を引っ張っています。これが結果的に、中央の官を相対的に強くしている。また、一番ひどいのが中央同士の癒着です。
―地方主権となりうる道州制を「夢」と表現した意図は。
岩崎 私はもう、道州制しか打開策がないと考えています。しかし、それをあえて「夢」と表現したのは、道州制という完全なシステムの転換なんて革命でしか起こりえないからです。
もとは中央の官なり民から道州制の議論が出てきているわけですが、うまく夢を見させて問題をごまかしているだけの話です。だって何も進んでないでしょう。逆に言えば、地方分権なんていうインチキな論理で、いったい何が起こったかというと、地方の疲弊です。言っているのとは逆のことが起こったわけです。
単純に考えて、絶対的なパワーを持っている中央の官が簡単に権力を手放すと思いますか。
―たしかに道州制は今のままで達成できるのかとずっと疑問でした。
岩崎 道州制を達成するには、徹底的に政治家の主導のなかで、大手マスコミや霞が関の官僚が何と言おうとも、法律を通せば良いだけの話です。なぜそれができないのかと言いたいくらいです。
日本は法治国家で立法が最高機関ですから、法律をつくれば皆がそれに従わざるを得ません。とくに一番間違っているのは、マスコミに国のシステムとして正当性のない第四の権力を与えてしまっている国民性なりメカニズムでしょう。
~つづく~
【大根田康介】
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