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アパレル業界特集 低価格ファッションの強さと脆さ(5)
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2009年5月19日 12:01

5.勝ち残るのはどの企業か

 ファストファッションで勝ち残るのはどこか。ギャップやザラは日本全国に店舗網を広げ、景気悪化を受けて異例のセールを実施するなど対応も早い。ユニクロやしまむらも全国展開を終え、さらなる低価格業態やPBによる価格戦略に軸足を置き始めている。
 4月末には、米国発のファストファッション専門店「フォーエバー21」が日本上陸。お
そらくH&Mに続き、主要都市での展開を視野に入れているはずだ。
 量販店はイオンやイズミがPBによる自主編集売場を整備する一方、ダイエーは衣料品改革が手つかずの状態。ユニクロ系のブランド、ジーユーのGMS導入も立ち消え状態だ。
 百貨店はファストファッション参入より、商品政策の見直しを進めている。有名ブランドのセカンドライン、いわゆる廉価版の投入で消費者に買いやすさを訴求する戦略である。ただ、地方百貨店の中には、手っ取り早くH&Mのテナント誘致に走っているところもあるようだ。
 しかし、グローバル経済の中で百年に一度の危機は、世界中の消費者をさらに低価格へと走らせた。仮に景気が回復したとしても、低価格に慣れた消費者が元の高価格帯に戻るとは考えにくい。
 不況の中で、消費者はもはや衣料品について正価の60%~70%オフでないと安く感じないのではないか。ジーユーが売り出した990円ジーンズも、ユニクロが販売する2,990円の商品の3掛けという感覚で捉えているはずだ。

◎価格だけでは脆さも見える

 ユニクロがこのほど発表した09年2月期の中間連結決算は、売上高3,574億円で対前年比13%増。営業利益も28.7%増の698億円となり、ともに最高をマークした。好調の要因は発熱保温素材のヒートテックやダウンジャケットのヒットという。
 ただ、同社の戦略は流行やデザインを追わないベーシック路線であり、素材開発がヒットの正否を握ると言えなくない。先述したが、SPAとしては先に商品を量産し、売り減らしていく古典的なスタイル。消費者の嗜好に合わなければ、在庫過多になるリスクはずっとついてまわるのだ。
 一般にSPAはメーカーと小売りの両機能をもつため、商品代や物流費、人件費、家賃など相当の経費がかかる。また、量産を前提としたシステム開発が先行しているため、相当の市場規模が必要でグローバルな展開が不可欠になる。地元のアパレルメーカーや小売業が、福岡アジアコレクションで福岡発のブランドに手応えを感じたとしても、SPAのシステムを構築できないのはこのためだ。
 現在、メーカー系のザラやファイブフォックスに対し、小売系のH&Mやユニクロの方が消費者に近い分、売り上げは好調に推移している。ファストファッションの世界は消費者の嗜好をすばやく捉え、価値に対する適正価格の商品を提供できるところが、最終的には勝ち残ると言えそうだ。
(了)

【剱 英雄】

消費者の嗜好をつかみ、値頃感のある商品を提供できる企業が勝ち残る

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